岐阜新聞 映画部

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なぜこんなに格差が生まれるのかを紐解いた、経済学エンタメドキュメンタリー

2020年07月10日

21世紀の資本

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【出演】トマ・ピケティ、ジョセフ・E・スティグリッツ ほか
【監督】ジャスティン・ペンバートン

劇映画や絵画、写真、ゲーム等を使って巧みに分かりやすく説明している

 日本では高度経済成長による中間層の増大から、「一億総中流」と言われた時代があった。しかしバブル崩壊後、新自由主義による競争原理の導入で所得格差が増大し、経済的階級は「上級国民・下級国民」と呼ばれるほど固定化されてきている。

 本作はフランスの経済学者ピケティが、世界的になぜこんなに格差が生まれるのかの真相を紐解いた、経済学エンタメドキュメンタリーだ。

 彼は資本主義の始まりであるイギリスの産業革命、近代ブルジョア社会を樹立したフランス革命、帝国主義的植民地支配、奴隷制度、2つの世界大戦、大恐慌、オイルショック、リーマンショックなど世界史的出来事と経済(資本)を結び付け、膨らみ続ける資本主義社会の貪欲で傲慢な実態について、真実を明快に暴いていく。

 結論から言えば、特にベルリンの壁崩壊以降の経済成長は、労働の産物による経済成長率よりも、資産運用で得られる資本収益率の方がはるかに高い。働くよりも、金持ちが金を回す方が儲かるという仕組みだ。

 その結果、誰でもチャンスがあればお金持ちになれる世界から、経済的格差が固定化され金とコネが巾をきかす世襲資本主義が跋扈し、ちょっとやそっとでは上へ行けなくなってしまった。これが格差の固定化である。

 それを避けるためには、政治力をもって富の再分配をしていく。具体的には全世界が連携してタックス・ヘイヴン地を無くし、累進資本課税を導入すること。簡単に言えば、お金持ちから税金を徴収し再分配することである。

 このドキュメンタリーが素晴らしいのは、その構造を、劇映画や絵画、写真、ゲーム等を使って巧みに分かりやすく説明していることだ。映画では『怒りの葡萄』『ウォール街』『レ・ミゼラブル』などを的確に使い効果的だし、ゲームのモノポリーでは資本を独占していく心理が実に面白い。

 新型コロナ下であぶり出された、世界のいびつな仕組みがよく分かる快作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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