岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

豊かな物語を流麗に描いた傑作

2020年07月22日

ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語

【出演】シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン、ティモシー・シャラメ、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、ローラ・ダーン、メリル・ストリープ
【監督・脚本】グレタ・ガーウィグ

女性の幸せって何?という問いかけ

 小説「若草物語」は1868年にルイーザ・メイ・オルコットによって発表された。19世紀後半のアメリカを舞台に、マーチ家の四姉妹を描いた物語で、オルコットの自伝的な要素が強い。小説は世界中で読まれ、映画、舞台にとどまることなく、漫画やアニメとしても広く世に知られている。

 1860年代、マーチ家の四姉妹はマサチューセッツに暮らしていた。小説やこれまでに映画化された作品と違うのは、次女のジョー(シアーシャ・ローナン)は、既に実家を離れ、作家になるべく、ニューヨークにいるという時点から始まり、ジョーの視点による回想という形式がとられていることである。

 ジョーは出版社に小説を持ち込む。作品は編集者に気に入られたりするが、そこに介入するのは明らかな偏見に基づく、女性像の固定概念によるものだった。「女性が女性として幸せになれる結末を描け」…男性中心社会が生み出す偏見にジョーは苛立つが、握りしめた拳は机の下にあった。

 長女のメグ(エマ・ワトソン)は恋愛の末、平凡な教師と結婚していた。三女のエイミー(エリザベス・スカンレン)は、病弱だったが一家を和ませてくれる存在。四女のエリザベス(フローレンス・ピュー)は、金持ちの未亡人マーチおばさん(メリル・ストリープ)の期待を一身に集めていた。「女は資産家のところに嫁いでこそ」という信念を持ち、貧乏くじを引いた母(ローラ・ダーン)のことを引き合いに出して、一家を支えるのはあなたの役目だと喝を入れた。

 マーチ家のお向かいさんのローレンス家はお金持ちで、跡取りを期待されているローリー(ティモシー・シャラメ)は、四姉妹とは遊び仲間で、ジョーとは互いに魅かれ合う仲でもあった。

 物語はいくつかのエピソードを手掛かりにして、自在に過去に戻り、その瞬間の感情を今と対比してみせる。それを支えるのは役者たちの仕草や動きで、感情の機微を見事に表現している。

 素敵な映画的時空に誘ってくれる傑作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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