岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

私の大好物なツッコミ映画

2020年06月27日

太陽の家

©2019映画「太陽の家」製作委員会

【出演】長渕剛/飯島直子、山口まゆ、潤浩/柄本明、上田晋也(友情出演)/瑛太、広末涼子
【監督】権野元

『男はつらいよ 幸福の青い鳥』で渥美清が霞むほどの印象を残した長渕剛

 寅さんが若者の恋を応援する側にまわる"恋愛コーチ編"の1本で、青春恋愛映画として出色の出来であった『男はつらいよ 幸福の青い鳥』。映画初出演の長渕剛は、9か月後に結婚する志穂美悦子の恋人で鹿児島出身の気さくな兄ちゃん役。画家を目指しているが思うような作品が描けず悩んだり、好きな恋人の前で素直になれない不器用な男を繊細に演じていて、私の中では渥美清が霞むほどの印象を残している。

 そんな臆病で弱っちい青年を演じていた長渕剛が、33年の時を経て、マッチョな昭和の親父をダダ洩れの自己顕示欲で演じ、ひとり悦に入っているのが本作である。

 己の思い入れが強すぎるのか「愛と信念」のテーマのためには、ストーリーの破綻など一向にお構いなし。冒頭大工の棟梁である川崎信吾(長渕)が、初対面の池田芽衣(広末涼子)の「コーヒー飲みませんか?」という唐突な誘いに、仕事をほっぽり出してヒョイヒョイとアパートに付いていく。恐ろしきご都合主義!悪夢劇場の始まりである。

 芽衣の幼い息子・龍生に「男にしてやる」などと自分の思いのみを押し付け、彼女の了解なく小学校から勝手に連れ出し、連絡も一切せずに夜遅くまで連れ回す。なのに芽衣は戻ってきた龍生にいきなりビンタ!これ、普通に誘拐に虐待じゃん!

 川崎は川崎で、彼の身勝手なふるまいにブチぎれた娘の柑奈(山口まゆ)に、逆ギレしていきなりビンタ!これ言っとくけどDVですから!

 芽衣も「出張行くから2週間息子をよろしく」と、理解不能な嘘をついて実は入院・手術。言えばいいじゃん!弟子の高史(瑛太)を左官に転職させたのも、「お前のためを思って」と押し付けがましい。

 挙句の果てに、余命いくばくもないのに退院させられた芽衣と龍生のためにと、勝手に家を建てちゃう。嗚呼!頼りないパパと息子で大借金を背負うのだ。

 とまあ徹頭徹尾ひとりよがり、私の大好物のツッコミ映画でした。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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