岐阜新聞 映画部

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株主資本主義のままで会社の未来はあるのかを問う、極上のエンタメ映画

2020年06月12日

前田建設ファンタジー営業部

©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

【出演】高杉真宙、上地雄輔、岸井ゆきの、本田力、町田啓太、山田純大、鈴木拓、水上剣星、高橋努、濱田マリ、鶴見辰吾、六角精児、小木博明(おぎやはぎ)
【監督】英勉

一銭にもならないことを、真剣に考えて答えを出していく。

 ある大手ゼネコンに「地図に残る仕事」というキャッチフレーズがある。道路地図の会社で17年間「地図に載せる仕事」をしてきた私としては、心に響く言葉である。

 田子倉ダムや高瀬ダム、青函トンネルや東京湾アクアラインなどを手がけてきた前田建設が、富士山麓に「マジンガーZ」の地下格納庫兼プールを作るのなら、当然地図に載せることになり、ファンタジー営業部に掲載の協力を仰ぐことになる。

 秘密基地?いやいやモニュメントだから載せないわけにはいかない!なんて、私も劇中の営業部と同じように、想像をたくましく働かせて大いに楽しめた「お仕事」映画だ。

 今まで建設・土木業界は、「これを人間が作ったのか!」と驚嘆するような巨大建造物を数多く作ってきたが、国が成熟する中で、大型プロジェクトや困難極まる案件が少なくなり、「夢のある仕事」が減ってきていた。

 そこで、広報グループの熱血上司アサガワ(小木博明)が突然ひらめいたのは、「マジンガーZの格納庫を受注したら、見積りはいくらになるのか?」という、とんでもない積算の提案だった。

 調子のいいアサガワの口車にのせられ、仕事に情熱を見出せないドイ(高杉真宙)や、最初はバカバカしいと思っていた広報の面々が、まんまと巻き込まれていく。

 テンション高めの演技が続き、コテコテのコメディ路線で映画はスタートするが、みんなだんだん本気になっていくところがすこぶる面白い。機械グループ部長で職人肌のフワ(六角精児)や、土質担当で掘削オタクのヤマダ(町田啓太)も面白がってとことん付き合ってくれる。取引先の会社までマジで考えてくれる。一銭にもならないことを、真剣に考えて答えを出していく。

 新自由主義以降、成果主義や四半期ごとの短期目標など、おおらかで夢のある働き方がないがしろにされてきた。株主資本主義のままで会社の未来はあるのかを問う、極上のエンタメ映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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