岐阜新聞 映画部

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Meet somewhere

伝説のミュージカルスターの哀しき伝記

2020年06月07日

ジュディ 虹の彼方に

©Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

【出演】レネー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック、ルーファス・シーウェル、マイケル・ガンボン、ダーシー・ショー、ロイス・ピアソン
【監督】ルパート・グールド

アカデミー主演女優賞に輝く必見の熱演

 映画『オズの魔法使』の撮影中、そのセットの片隅で、MGM映画の独裁者だったメイヤーに諭される17歳のジュディがいる。この時、彼女が女優として生きる決意を固めたか否かは定かはではないが、この頃の出来事が、その後の彼女の生涯のトラウマの根っ子であったことは容易に想像できる。

 『ジュディ 虹の彼方に』の主な舞台は、彼女が亡くなる(69年)半年前に行われたロンドンでの公演が中心となる。過去はカットバックで挿入されるが、そこには常に自分の存在を問い続ける少女がいる。

 冒頭に登場する『オズの魔法使』はアメリカでは1939年に公開されている。日本では戦後、1954年になってようやく公開された。この年は彼女のもうひとつの代表作『スター誕生』が撮影された年で、ジュディの日本での紹介には、15年の歳月の中でタイムラグが存在する。

 ジュディ・ガーランドは、結婚(通算5度)、離婚を繰り返し、精神的にも不安定だったため、薬物に依存し、自殺未遂とサナトリウムへの入退院を繰り返した。その結果、ハリウッドの映画会社ともトラブルが多くなり、そのキャリアは次第に狭められていった。

 ジュディを演じたレネー・ゼルウィガーは吹き替えなしに見事な歌唱力を披露し、女優として母として女として生きようとする、心の揺らぎを繊細に表現している。外観見た目はあまりジュディには似ていないし、似せようともしていないが、そこには確かにジュディ・ガーランドが存在する。

 原作は2005年に初演された舞台「エンド・オブ・ザ・レインボー」の戯曲で、ステージとその裏側、ホテルの部屋などの会話が中心だが、MGM時代の回想でミッキー・ルーニーを登場させるなど映画的な広がりも持たせている。また、楽屋裏で出待ちをしているゲイのカップルとの一夜が印象的に挿入され、ラストに活かされる。ジュディはゲイのアイドルでもあった。

 何故、スターの伝記は哀しい結末ばかりなのだろうか? 悲劇だから伝説になるのか…?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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