岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

死を考えてしまった少年が生きる歓びに出会う

2020年05月30日

恐竜が教えてくれたこと

©2019 BIND & Willink B.V. / Ostlicht Filmproduktion GmbH

【出演】ソンニ・ファンウッテレン、ヨセフィーン・アレンセン ほか
【監督】ステフェン・ワウテルロウト

甘い恋のお話にも死や孤独や家族のことが散りばめられている

 サムは11歳。夏休みのバカンスで、オランダ北部のテルスヘリング島に家族で訪れている。しかし、父親の休日満喫モードにはいまひとつ乗り気になれないでいた。

 この世のすべての生き物が、いつか死を迎えることに気づいた彼の頭の中は「地球最後の恐竜は、自分が最後の恐竜だと知っていたのかな?」という疑問で満たされていた。

  家族の中で最後に死ぬのは一番若い自分になる、という理由をつくり、パパ、ママ、兄さんとはわざと距離を取り、浜辺や干潟でひとりぼっちの時間を持つ。来るべき孤独の時に自らを慣らす為、というのが、ヒネタ哲学的考察と子どもっぽい思い込みとセットであることが可愛い。

 そんなサムが地元の少女テスと出会う。女の子の方が大人びて見えるのは世の常だが、彼女は眩しいほどの快活な魅力に溢れている一方で、予測不能な言動で、次第にサムも振り回される羽目になる。

 原作はアンナ・ウォルツの児童文学「ぼくとテスと秘密の7日間」(フレーベル館刊)で、日本でも翻訳されて読書感想文の課題図書に選定されるなど、広く読まれている。

 主人公サムと大人びた少女テスの思春期真っ只中の淡い初恋物語は、大人も夢中にさせ、ノスタルジーへと誘う。

 テスは看護師のママと2人暮らしで、コテージの管理の手伝いを任されている。パパは火山の噴火で亡くなって、顔も知らないという。彼女が見せる極端なくらいの陰陽の落差は、そんな生い立ちが関係しているのかも知れない。

 そして、ついにテスは隠された真実をサムに告白する。死んだと聞かされていたパパは、本当は生きていて、フェイスブックでその存在を確認した。そして島に招待した。というものだった。彼女の秘密の計画は既に動き出していた。

 ヨーロッパの夏らしい陽光あふれる美しい風景のもと、瑞々しく甘い時間はきっと大人たちにも刺激を与えてくれる。これはそんな映画。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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