岐阜新聞 映画部

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自転車王国オランダの風景が美しい優良映画

2020年05月30日

恐竜が教えてくれたこと

©2019 BIND & Willink B.V. / Ostlicht Filmproduktion GmbH

【出演】ソンニ・ファンウッテレン、ヨセフィーン・アレンセン ほか
【監督】ステフェン・ワウテルロウト

彼は孤独に物思いに耽る。哲学者は実にカッコいい。

 「青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書に選ばれた児童文学が原作で、文部科学省特選という栄えあるお墨付きをいただいた『恐竜が教えてくれたこと』。

 人間のドロドロした感情や、のたうち回る生き様を描いた映画が大好きなマニアたちからは、端から敬遠されそうな映画であるが、たかが"少年向き"などと馬鹿にしないでいただきたい。これは哲学の映画なのだ。

 私は、尾崎豊とかSEKAI NO OWARIなど「中二病(例:狭い視野にも関わらず社会批判をしたり、厭世的になったりする)」的な青臭さが大好きであるが、この映画の主人公11歳のサム君(ソンニ・ファンウッテレン)の「小さな哲学者」ぶりは、「ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか、ニ・ニ・ニーチェかサルトルか、みんな悩んで大きくなった」と某洋酒メーカーのCMで野坂昭如が歌った歌詞の通りである。

 何しろ「地球最後の恐竜は、自分が最後の恐竜だと知っていたのか?」などという「死」や「孤独」という問題を真剣に考えちゃっている子どもなのだ。大人は「そんなんどうでもいいじゃん」と片付けてしまうが、彼の真剣な様子に青かった時代の我を振り返り、世間ずれした今を恥じたりする自分がいる。

 オランダ北部の島へバカンスにやってきたサム君一家。賑やかなビーチやマーケットを一歩離れると、茫漠たる草原や干潟が広がる砂浜がある。「我思う、ゆえに我あり」と思索するにはもってこいの場所で、彼は孤独に物思いに耽る。哲学者は実にカッコいい。

 そこで知り合った少女テス(ヨセフィーン・アレンセン)に淡い恋心を抱くサム君。突然無視されたり、兄貴と仲良くされたり、嫉妬の塊になってしまう。人生思うようにいかないことを学んでいくのだ。

 その後の展開は優しさに満ち溢れていて、「課題図書で特選」の期待通り。子どもに見せるに安心して欲しい。自転車王国オランダの風景が美しい、優良映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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