謎解きは強面探偵の繊細な推理とともに

　マサチューセッツ州の郊外にある豪邸では、著名なミステリー作家ハーラン・スロンビー（クリストファー・プラマー）の85歳の誕生パーティーが、近親の招待客が集う中、盛大に行われた。その翌朝、喉を切られたハーランの遺体が発見される。警察はその死因を自殺と認定するが、その結論に疑問を抱いた何者かが、再捜査を依頼することになる。騒めき立つ遺族の前に現れたのは、私立探偵のブノワ・ブラウン（ダニエル・クレイグ）だった。

　ミステリー映画では、著名な作家の作品が原作になることが多い。しかし、本作は監督のライアン・ジョンソンが、オリジナル脚本を自ら手がけ、ミステリーの女王アガサ・クリスティーに捧げるという、かなり高いハードルを掲げている。

　本格ミステリーでよくある設定、富豪、遺産、謎めいた家族、密室に準じる殺害現場など、導入から王道進行する。そして、最も重要なのは探偵の存在であろう。名作と言われるミステリーには数々の個性派探偵が登場し、作家の分身となる役目すら担っている。

　本作の探偵ブラウンは、屋敷の居間の椅子に幾分か横柄な態度で座っている。演じるダニエル・クレイグの見た目が強面なので、この第一印象は強調されるわけだが、その謎解きの手腕が映画の成功の鍵を握っている。

　ブラウンはパーティーの参加者である家族を対象に尋問を始める。ハーランの娘婿リチャードは不倫の秘密を握られ、娘の学費のピンハネも発覚していた。次男のウォルターは親族会社の出版社経営から降ろされようとしていた。その息子で孫のランサムは、パーティーの途中、ハーランと激しい口論をして早々に屋敷を出ていた。それぞれに緊張関係がある、みんな怪しい…観客も思わず身を乗り出す。

　ミステリーの謎解きを楽しむコツは、何気ない一言、さり気ない小道具…だろうか？

　言い過ぎを突っ込まれそうなのでこの辺で…存分にご堪能あれ！