映画館で観ているからこそ味わえる醍醐味
2020年04月21日
1917 命をかけた伝令
©2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
【出演】ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、マーク・ストロング、アンドリュー・スコット、クレア・デュバーク、リチャード・マッデン、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ
【脚本・製作・監督】サム・メンデス
3人目の兵士になり一緒に戦場を突っ切っていく感覚
アカデミー賞受賞者である監督のサム・メンデス、撮影のロジャー・ディーキンス、編集のリー・スミスの三大巨頭が結集し、リアルタイムな時間の経過と途切れのない映像で、観客を第一次大戦の真っ只中へ放り込んだ、臨場感たっぷりのロールプレイングゲームのような戦争映画である。
物語はいたって単純。「対峙するドイツ軍が撤退するというのはフェイクだ。突撃は中止せよ。」との命令書を、最前線の部隊に届ける迄のお話。若き2人のイギリス人兵士スコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)は銃弾が飛び交う中、おびただしい兵士の死体をかき分け、罠があるかもしれないうち捨てられた塹壕などをネズミに襲われながら突破していく。
カメラは、彼らの背後にピタリとくっついていく三人称視点で、観客は3人目の兵士になり一緒に戦場を突っ切っていく感覚になる。この臨場感は映画館で観ているからこそ味わえるのであり、映画館で観る醍醐味である。
撮影技法だけでなく、ドラマとしても素晴らしい。たまたま指名された2人が、状況が刻々と変わっていく修羅場の中で次第に心を通わせていく様子や、途中で出会う人たちとのやりとりは、強く心を揺さぶられる。
なお、映画の宣伝文句では「ワンシーンワンカット」と言っているが、そうではない。映画を観ていると、ちょっと目の肥えた映画ファンならすぐに気づくと思うが、カメラが追っている2人の主人公が、フレームから消えるシーンが何度もある。また、意識がブラックアウトし時間が飛んでいくシーンもある。繫ぎ目が不自然にならないよう緻密に計算されているのだ。そもそも、この映画には一級の編集マンが関わっている。
超一流の映画人たちが、寸分の狂いもなく、わざとらしさもなく、超弩級の戦争映画に仕立てた作品で、戦場の凄まじさや惨さ、理不尽さにノックアウトされる。映画館で観るべき映画だ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。