岐阜新聞 映画部

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Meet somewhere

アメリカの不公平で不合理な現実

2020年04月23日

黒い司法 0%からの奇跡

© 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

【出演】マイケル・B・ジョーダン、ジェイミー・フォックス、ブリー・ラーソン ほか
【監督】デスティン・ダニエル・クレットン

決して過去の話ではない

 2014年に発表された「米冤罪事件データベース」によると、過去25年間で再審によって無罪となった刑事事件は約1300件。そのうち死刑囚だった人は143人に上る。2013年に限ると、冤罪無実は87件。要因(複数)は目撃者による嘘や偽証が56%、捜査当局による証拠の捏造や隠蔽が46%、面通し時の目撃者の誤認が38%。さらに、殺人事件で黒人が冤罪となる可能性は白人の約7倍という報告もされている。

 本作は1980年代後半、黒人差別が根強く残るアメリカ南部アラバマ州で、白人少女が何者かに殺害された事件により、犯人にでっち上げられ死刑判決を受けた黒人青年と、彼を助けるために立ち上がった黒人新人弁護士が、様々な妨害を乗り越え不屈の精神で再審無罪を勝ち取るまでを描いた実話である。

 ハーバード大ロースクール出身の人権派弁護士ブライアン(マイケル・B・ジョーダン)が目の当たりにしたのは、完全なアリバイがあるのにもかかわらず死刑執行を待つばかりの黒人青年ウォルター(ジェイミー・フォックス)。

 彼の調査によって、黒人を犯人にしておけば全てが丸く収まるとばかりに、警察はロクな捜査もせずウォルターを逮捕。予断と偏見の中、検察官も白人ばかりの陪審員も裁判官も、予定調和のごとく彼に死刑判決を下していった事が次第に分かってくる。ウォルターは、少女を殺した犯人がどこにいるか分からないという街の不安を取り除くためのスケープゴートにされたのである。

 そもそも数多くのアリバイがあったのだが、再審で、唯一の目撃証言者である重犯罪人が、司法取引により偽証を強いられたのだと証言を翻そうが、当時の警察官や監察医が証言を捻じ曲げられたと発言しようが、判決は覆らない。

 最後は無罪を勝ち取るのだが、映画はアメリカの不公平で不合理な現実を、事実でもってあぶり出していく。決して過去の話ではないのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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