岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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最後の取り引きに勝負していく姿を描いた、爺からと孫へと心を繋ぐ映画

2020年04月16日

ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像

©Mamocita 2018

【出演】
【監督・脚本】

白髪にあご髭でチェックのスーツに身を包んだオラヴィは、サンタクロースに見えてくる

 美術商にとって幻の名画を発見する事は、きっと生涯の夢であり、プロとしてのエクスタシーと人生一発逆転の興奮を味わう事だろう。

 2017年、世の中に20点未満しか現存していないダ・ヴィンチの作品のうち、長い間行方が分からなかった幻の名画「救世主」が本物と鑑定され、オークションの結果508億円でサウジアラビアの王子が落札した。この絵が1958年に競り落とされた時の価格は6800円。夢のような本当の話である。

 本作は、家庭を顧みず仕事を最優先にしてきたフィンランドの老美術商オラヴィ(ヘイッキ・ノウシアイネン)と、問題児の孫息子オットー(アモス・ブロテルス)とのスーパー年の差コンビが心を通い合わせていく様子と、オークションハウスで見つけた1枚の肖像に魅入られ掘り出し物と判断し、最後の取り引き(ラスト・ディール)としてプライドをかけて勝負していく姿を描いた、爺からと孫へと心を繋ぐ映画である。

 オラヴィはまずは純粋な眼だけによる判定で、オークションに出された肖像画を相当な逸品であると睨んでいく。著名や来歴は無いが、過去の美術展のカタログから、ロシアの偉大な画家イリヤ・レーピン(1844-1930)の名画と判断し、資金繰りに走り回り全財産を投げうってオークションで落札する。

 レーピンは1899年から死ぬまでフィンランドで過ごしており、親しみのある画家なのであろう。もっとも、オラヴィが販売しようとしていた顧客はスウェーデンの富豪で、皮肉にもフィンランドが大国の間に挟まれた国である事を示している。

 曇り空の中、陰鬱だが静かな冬のフィンランドの風景は美しく、白髪にあご髭でチェックの上下のスーツに身を包んだオラヴィは、何だかサンタクロースに見えてくる。若いやり手の美術商との駆け引きには、はったりを利かせる元気はある。最後の大勝負の結果はほろ苦いが、いい人生だったのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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