岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

大好きな「おかあさん」に捧げたポエムのような年代記映画

2020年04月05日

母との約束、250通の手紙

©2017 - JERICO-PATHE PRODUCTION - TF1 FILMS PRODUCTION - NEXUS FACTORY - UMEDIA

【出演】シャルロット・ゲンズブール、ピエール・ニネ
【監督・脚本】エリック・バルビエ

父と息子とは違う、母・息子の関係

 本作は、フランスの文豪ロマン・ガリ(ピエール・ニネ)が、シングルマザーのニーナ(シャルロット・ゲンズブール)の愛情を一身に受けて育ち、母の期待に応えて作家としてデビューする迄を描く、大好きな「おかあさん」に捧げたポエムのような年代記映画である。

 第二次大戦前の二十世紀前半、女性の権利もままならない時代の中で、母子家庭として生きていくのは、さぞかし大変だったに違いない。ましてやユダヤ系ポーランド人として迫害されてきたニーナが、自分の苦労を味合わせたくない一心で、ちょっと気弱で優しすぎる息子に対し、びくびくしながら社会の片隅で生きていくのでなく、実力でのし上がって堂々と生きていってほしいと願うのは母の愛情に他ならない。

 憧れのフランスに移り住んだ親子。バイタリティ溢れる「肝っ玉かあさん」の下で、少年ロマン・ガリは、ちょっとうっとうしくお節介に思える母の愛情を、生来の優しさから素直に受け入れていく。母と息子という関係は、身体が大きくなってくればチカラでは母に勝ってしまう。そこを自制し、女性としての母をいたわる気持ちが、親子関係をうまくかせる秘訣のような気がする。そこが父と息子の関係とは違うのだ。

 前半のニーナの視点から、後半は独り立ちしたロマン・ガリの視点へと移る。独り立ちした彼は、パリの大学へと進学する。そしてフランス軍に入隊し、パイロットとして戦場へ赴く。母からの愛は、たまにやってくる面会と毎週届く手紙に代わっていく。

 ある事件がきっかけで独房に入れられたロマンは、おかあさんの幻影を見る。母から距離をおきたかった彼も、解放されてみると母の存在の大きさと愛情の深さを感じずにはいられない。離れたからこそわかる母の愛なのだ。

 250通という手紙を、コツコツと思いを込めて書いている母の姿を想像すると、胸が一杯になってくる。「おかあさん、ありがとう」という映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (7)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る