岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

天才監督による驚天動地の傑作

2020年04月19日

パラサイト 半地下の家族

©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

【出演】ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
【監督】ポン・ジュノ

「半地下」のどっちにもころぶ境界線の感じが凄い

 OECD加盟34か国の中で、韓国の相対的貧困率は14.9%(27位)と高い水準となっている。ちなみに日本は16%(29位)、アメリカは17.4%(30位)とさらに悪い(2010年調べ)。アメリカの影響力が強い環太平洋地域の国々は、成熟した民主国家の多いヨーロッパに比べて所得格差が大きくなってしまった。

 本作の主人公は、トイレが部屋の最上部にあり、Wi-Fiが繋がらない半地下部屋に住む住居貧困層のキム一家。4人とも失業中の身だが、誰もめげてない。彼らは坂の上の大邸宅に住むIT企業経営者パク一家の下へ、一人ひとり知恵を使って就職しパラサイトしていく。

 現状を打破していくしたたかさは、「万引き」をして生活する家族や「宅配便のドライバー」でドツボにはまる真面目なイギリス人からみたら、信じられない事かもしれない。とにかくこの家族はパワフルで、後ろめたさなど微塵もない破壊的な行動力がある。

 この地上でも地下でもない「半地下」という摩訶不思議な構造は、本作のテーマを表している。半分は地上で陽も1日に数時間は差すので「気分は中流」という意識と、しかし半分は地下であり「もっと落ちていくかも」という恐怖。このどっちにもころぶ境界線の感じが凄い。

 上流階級であるパク家だってIT系という事は、地主とか財閥出身でなく、己の才覚でのし上がってきた人物だろう。決して悪く描かれてはいない。だが、こういった「スタートは同じでしょ」という金持ちに対しては、嫉妬と妬みがまとわりつくのも事実だ。こういう視点がポン・ジュノ監督作品の一筋縄では行かないところだ。

 そして半地下の下には「完地下」があった!社会のセーフティネットが届かないところ、見捨てられた階層。闘いは半地下VS地下となっていくが、こういった階級構造による歪みを、予想もつかない展開で娯楽映画に仕立てていく。

 天才監督による驚天動地の傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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