岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

蘇った100年前の戦争の記録

2020年03月25日

彼らは生きていた

© 2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

【製作・監督】ピーター・ジャクソン

戦死者が最も多かった悲惨な戦いと生きる日常

 現在、イギリスには点在する5つの帝国戦争博物館があるが、そのはじまりは、第一次世界大戦の記録を残すという目的で1917年に設立された。

 第一次世界大戦は1914年に始まったが、戦いの形態は戦争に参加した国に政変が起こるなどして複雑化している。終結したのは1918年秋のことで、これにもドイツで革命が起きたことが終戦(休戦)の要因になっている。

 イギリスは戦勝側の連合国のひとつではあるが、戦争の記録のための博物館を終戦に先立って設立したことになる。

 『彼らは生きていた』は、その帝国戦争博物館が所蔵する第一次世界大戦の2200時間に及ぶ記録フィルムから生まれたドキュメンタリーである。

 保存されていた100年前のフィルムは当然のように劣化が進み、その修復から作業は始まった。モノクロのフィルムは通常の1秒24フレームではないものもあったため、バラバラなスピードを調整統一することが必要だった。

 当時はサウンドトラックといった録音の技術がなかった。そこで音声はBBCが保存していた600時間に及ぶ退役軍人のインタビュー音源を構成し直し、映像に合わせたナレーションとして使用する方法が採られた。戦闘シーンの爆撃音などは効果音として挿入されている。

 映画はスタンダードサイズの小さな画面から始まる。モノクロの画像には召集される兵士の姿が映し出される。その多くは貧しい階層からの志願者で、年齢制限の18歳にも満たない幼さの残る若者だった。

 そして戦場へ…映像はカラーに、フィルムのサイズもワイドに変わる。その美しさは尋常ではない。兵士の日常、食事をはじめとする生活の様子が、兵士たちの笑い声までが聞こえる。勿論、戦闘シーンもあるのだが、強烈な印象は若者の笑顔である。

 監督は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソンで、祖父は兵士だった。製作の意思には強い使命感が込められている。

 ※まもなくCINEXで公開される『1917 命をかけた伝令』を是非とも併せてご覧頂きたい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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