岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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現代の人と人との繋がりを手紙に託して描いた、岩井美学を堪能できる新しい恋愛映画

2020年03月23日

ラストレター

©2020「ラストレター」製作委員会

【出演】松たか子、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、小室等、水越けいこ、木内みどり、鈴木慶一/豊川悦司、中山美穂、神木隆之介、福山雅治
【監督・脚本・編集】岩井俊二

不便だったからこその距離感や行間が、心と心の繋がりを強めていった

 映像作家と呼ぶにふさわしい岩井俊二監督作品の魅力は、透明感のある美しく繊細な映像と、ファンタスティックなオリジナルストーリー、瑞々しい表情の役者の捉え方など、日本映画界の中でひときわ光る独特の空気感や色彩を持っているところにある。

 1995年に公開された長編第1作『Love Letter』は、ゆったりしたカメラワークと優しい光の映像がノスタルジックな物語を優しく包み込んだ、今までにない恋愛映画の傑作であった(キネ旬ベスト・テン3位。読者1位)。

 それから25年、SNS全盛の時代。『ラストレター』は、勘違いから始まる物語の発端を同じくする、現代の人と人との繋がりを手紙に託して描いた、岩井美学を堪能できる新しい恋愛映画である。

 物語はキュンとした気持ちと凛とした美しさ、透明感のある肌感覚が心地よい映像に乗って爽やかに流れていくので、物語上の多少の過誤や若干の強引な展開など、取るに足らないことと思えてくる。これぞ岩井ラブストーリーの真骨頂であり魔術なのだ。

 「君にまだずっと恋してるって言ったら信じますか?」というこの映画のキャッチコピーが、照れやカッコつけすぎに感じられないところも、まさに岩井ワールドである。

 瞬時に相手に届くメールやSNSは大変便利であるが、手紙にあった相手に届くまでのもどかしさ、返事を待つじれったさ、時候の挨拶を読んでいる時の本文に入るまでの期待感。むしろ不便だったからこその距離感や行間というアナログ感覚が、心と心の繋がりを強めていったのだ。

 裕里(松たか子)の初恋の相手・鏡史郎(福山雅治)とのやりとりが主体ではあるが、この素敵な物語の中で強烈な言葉がある。未咲(広瀬すず)の元恋人の阿藤(豊川悦司)が、彼女に淡い恋心をよせていた鏡史郎に向かって、「お前は彼女に何の影響も与えてない」と言い放つ!私のココロにもグサッときてゾッとした。完敗である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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