岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

パリ郊外の貧困地区の暗部を描く問題作

2020年03月24日

レ・ミゼラブル

© SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS

【出演】ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガ、ジャンヌ・バリバール
【監督・脚本】ラジ・リ

黒人監督の長編デビュー作

 これはベストテン級の秀作だ。アントワーン・フークワ監督の『トレーニング デイ』(2001)とジャック・オーディアール監督の『ディーパンの闘い』(2015)、『預言者』(2009)をミックスさせたような作風。題名はビクトル・ユーゴーの同名小説と同じ地域だから。小説から150年経っても貧困地区は変わらない。映画の冒頭は2018年7月のロシアワールドカップ優勝に沸くシャンゼリゼ。今やフランスは移民大国。サッカーチームの主力はエムバぺやポグバなどアフリカ移民の黒人選手だ。お祭り騒ぎの賑わいも大半が有色人種だ。

 舞台となるモンフェルメイユはパリ市内から東に10キロほどの郊外。1960年代に建てられた団地は、今や貧困層と移民の地区に成り果てている。市長と呼ばれる自治会長のような役回りの人物、イスラム同胞団の事務所を兼ねるケバブレストラン店長である宗教指導者、マフィアの出先のようなヤクザたちの3者が微妙に均衡を保ち、地区の出来事に目を光らせている。そこに地元警察のパトロール隊3名が絡み合う。

 物語はある少年がいたずらでルーマニア人の移動動物園からライオンの赤ちゃんを盗む騒動から始まる。些細な出来事が周囲の緊張からとんでもない方向に進んでいく脚本が秀逸。一旦収束したかに思えた話が、ラストに向かっていく緊張感や臨場感に目を見張る。あえて欠点を挙げれば、団地の中の人間関係や少年の周囲の状況が今一つ分かりづらい点。事前の説明なり、伏線が必要だろう。ラジ・リ監督はこれが長編デビューというから凄い。そうした欠点を補って余りある迫力とリアリティ十分な快作だ。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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