岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

晩年のジュディ・ガーランドを描いた伝記

2020年03月11日

ジュディ 虹の彼方に

©Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

【出演】レネー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック、ルーファス・シーウェル、マイケル・ガンボン、ダーシー・ショー、ロイス・ピアソン
【監督】ルパート・グールド

LGBTのシンボルカラーは彼女の歌から

 女優としての名声や歌手としての実力は『オズの魔法使』(1939)やMGMミュージカルのドキュメント『ザッツ・エンタテインメント』(1974)で知ってはいたが、晩年の不遇時代に焦点を当てた本作を見て、改めて若くして亡くなった悲劇性を感じた。享年47歳。10代半ばでのデビュー当時は、まだタイクーンと呼ばれたハリウッドの大物プロデューサーが生きていた時代。この映画では、MGMの一角の製作者が撮影中のガーランドに対し、体形が変わるのを恐れ昼食代わりに錠剤を与える。そういう時代だったのだ。

 1930、40年代を通じて共演者だったミッキー・ルーニーも登場するが、映画のセリフの中で今はボーリングのボールのようになってるわ、と言われてしまう。確かに晩年はそういう姿に変わり果てた。本人の不摂生と思っていたが、明らかに若いころから摂取した薬の副作用だ。ガーランド自身も長らく不眠に苦しんだ様子が描かれる。

 そんな境遇でも歌唱力は圧倒的だ。それをスクリーンで再現したレネー・ゼルウィガーも凄い。真横からの表情などジュディ・ガーランドに似ている。デビュー時から量産された青春映画であれだけMGMを儲けさせたにもかかわらず、晩年になって映画女優としての盛りを過ぎれば、見向きもしないという冷酷さに改めて唖然とする。撮影所の中の狭い世界で育った女優は世間一般の常識からも大きく乖離し、どうしようもない男たちに惚れてしまい、やがて捨てられる。

 救いは遠く離れた子供たちの成長と一途なファンたち。ロンドンのゲイのカップルがガーランドを一目見ようと劇場の入り口で一悶着起こすシーンがある。晩年の彼女がこの逸話通り、ファンたちに救われたとしたら、この悲惨な物語にも光明が見える。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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