岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

社会派娯楽映画の傑作で出色のバディ映画でもある

2020年03月13日

リチャード・ジュエル

© 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

【出演】サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ポール・ウォルター・ハウザー、オリビア・ワイルド、ジョン・ハム
【監督・製作】クリント・イーストウッド

イーストウッド監督は俳優から最良の演技を引き出すのに長けている

 『リチャード・ジュエル』は、傑作揃いのクリント・イーストウッド監督作品の中でも上位に入る傑作だ。

 近年のイーストウッドの作品は実話の映画化が続いているが、今回も1996年のオリンピック開催中のアトランタで起こった爆破テロの顛末を描いている。

 誤った先入観に固執する捜査員、暴走するマスコミ、冤罪はこうして生まれるを絵に描いたような展開。こういう事が実際に起こったのだから恐ろしい。

 『アメリカン・スナイパー』で戦争の英雄の苦悩を描いてから、英雄についての作品を連発しているイーストウッドは、この作品では英雄から一転、爆破テロの容疑者にされてしまったリチャード・ジュエルの名誉回復を描く。『ハドソン川の奇跡』に近い内容だが、社会の底辺に位置する主人公である分、より肩入れしたくなる。

 イーストウッド監督は俳優から最良の演技を引き出すのに長けている。この作品でも地味なキャスティングながら、実力派の俳優を揃えリアリティーのあるドラマを構築している。弁護士ワトソン・ブライアント役のサム・ロックウェルがさりげない表情の変化で見せる味わい深い演技。リチャードの母親役キャシー・ベイツもオスカー・ノミネートに相応しい好演。そして、主人公リチャード・ジュエルを演じるポール・ウォルター・ハウザーには、映画の進行とともに情が移ってくるほどの不思議な魅力があり、まさにはまり役言えよう。

 『リチャード・ジュエル』は優れた社会派エンタテインメントであり、出色のバディ映画にもなっている。リチャードとワトソンの出会いのエピソードから始まるこの作品は、忠告に反するリチャードの言動に、ヤキモキさせられ通しのワトソンの表情に我々観客も感情移入させられながら、やがて終盤のリチャードの反撃とワトソンのしてやったりの表情でクライマックスに到達する。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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