岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

太宰原作を脚色した心情コメディ

2020年03月01日

グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇

©2019『グッドバイ』フィルムパートナーズ

【出演】大泉洋、小池栄子、水川あさみ、橋本愛、緒川たまき、木村多江、皆川猿時、田中要次、 池谷のぶえ、犬山イヌコ、水澤紳吾、戸田恵子・濱田岳、松重豊
【監督】成島出

振りかぶりが大きい分空回りする人物像

 太宰治の「グッド・バイ」が朝日新聞に連載されたのは1948(昭和23)年の6月21日号からなのだが、太宰はその月の13日に自死している。しかし、原稿は10回分が既に入稿されていて、さらに3回分が遺されていたが、小説は未完に終わった。翌年には新東宝で、監督・島耕ニ、脚本・小国英雄、主演・高峰秀子、森雅之で映画化された。その後も映像化、舞台化は何度も行われている。

 映画『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』は、2015年に初演されたケラリーノ・サンドロヴィッチ脚本・演出による、KERA・MAP公演の戯曲「グッドバイ」を原作としている。

 敗戦後の東京、未だに焼け跡が残り、点在する闇市には混沌とした活気が満ちている。田島(大泉洋)は文芸誌の編集者だが、裏では闇物資の横流しで、懐を膨らませている。担ぎ屋をするキヌ子(小池栄子)はなりふり構わない豪快さで、裏世界を女ひとり、逞く生きていた。

 田島は疎開先の青森に妻と娘を残したままだったが、ある日、覚えたての文字で綴られた娘からの葉書を受け取る。再会を懇願する手紙に諭され、生活の一新を図ろうとするのだが、田島には障害となる大きな問題があった。

 未完の小説は、前作「人間失格」以前からあった企画で、太宰はその構想を編集者に語っている。映画化、映像化、舞台化には脚色が必要で、特に結末のかたちは様々になる。

 田島には両手に余るほどの愛人がいた。身辺整理のために別れる決断をするのだが、優柔不断な性格がそれを邪魔する。窮地に追い込まれた田島は、担当作家の漆原(松重豊)に相談を持ちかける。その妙案(?)は、愛人に別れ話を切り出す際に美人妻を同伴して、女性たちを諦めさせるというものだった。その大役に白羽の矢が立ったのが、馴染みの担ぎ屋キヌ子だった。

 かなり強引な導入で、お話は途中で頓挫する。キャラクターの設定は舞台のそれを引き継いだためか、過剰なデフォメルが気になる。そして、結末の転じ方も凡庸と言わざるを得ない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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