岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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エルンスト・ルビッチやビリー・ワイルダーをリスペクトした、大人のロマンチックコメディ

2020年03月01日

グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇

©2019『グッドバイ』フィルムパートナーズ

【出演】大泉洋、小池栄子、水川あさみ、橋本愛、緒川たまき、木村多江、皆川猿時、田中要次、 池谷のぶえ、犬山イヌコ、水澤紳吾、戸田恵子・濱田岳、松重豊
【監督】成島出

「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。」

 喜劇王チャップリンに、「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。」という名言がある。当事者にとっては深刻で悩ましい問題も、傍から見ると滑稽で可笑しかったりすることはよくある。

 本作は、太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」を基に、その続きを大胆にアレンジしたケラリーノ・サンドロヴィッチの舞台を映画化した喜劇で、エルンスト・ルビッチの艶笑喜劇や、ビリー・ワイルダーのシチュエーションコメディ等をリスペクトした、大人のロマンチックコメディである。

 インテリで雑誌編集長の田島周二(大泉洋)は、妻子があるのに女にだらしがない。俗に言う「女たらし」の男だ。こんな奴のどこに女が惚れるのか、私にはさっぱり分からないが、とにかくモテる。うらやましい。

 この優柔不断なダメ人間・田島が、だみ声の担ぎ屋でバイタリティ溢れるキヌ子(小池栄子)に頼み込んで偽夫婦となり、お芝居を演じて愛人に「グッドバイ」を告げていくお話であるが、馬鹿馬鹿しいコントみたいな展開が苦笑を誘う。

 田島の愛人たち、花屋の未亡人(緒川たまき)、挿絵画家(橋本愛)、女医(水川あさみ)、みんな自立した職業婦人である。「ああ、そうですか」なんて殊勝なご婦人など誰もいない。極めつけは疎開中の後妻・静江(木村多江)。すべてお見通しの上、田島に「グッドバイ」を通告する。自業自得である。

 ただ、この映画でやろうとしていることは分かるが、意図している通りにははじけてない気がする。副題に「人生喜劇」とあるように、人間の生きざまの滑稽さを笑えばいいのだが、だいたい苦笑レベルに終わってしまう。それは何故か?と考えると、話術に尽きる。

 同じ話をしても、名人の落語とか「すべらない話」などは爆笑の渦となる。この映画の惜しいところは、話の抑揚とテンポと間がもう一つなのだ。あくまでも私の笑いのツボの話であり、映画は悪くない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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