岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

孤高のJAZZミュージシャンの死の真相

2020年02月08日

マイ・フーリッシュ・ハート

©2018(PUPKIN)-VPRO

【出演】スティーヴ・ウォール、レイモント・ティリ、ハイス・ナバー
【監督・脚本】ロルフ・ヴァン・アイク

圧倒的な演奏の裏側の悲壮な私生活

 昨年10月7日逝去されたイラストレーターで映画監督でもあった和田誠の著作に「ポートレイト・イン・ジャズ」(新潮社)がある。ジャズを愛してやまなかった氏が、ミュージシャンのイラストを描き、それに村上春樹がエッセイを添えるという素敵な本だ。その巻頭に登場するのが、『マイ・フーリッシュ・ハート』の主人公チェット・ベイカーである。

 1988年5月13日金曜日の真夜中、アムステルダムのホテル前の路上に、男がうつ伏せに倒れている。警察の非常線を越えてひとりの刑事が近寄る。男は頭部から血を流し既に息絶えている。刑事は遺体を確認すると、ホテルを見上げる。男が居たかもしれない部屋の窓に人影を見る。部屋は乱雑な生活跡を残したままで、机にはドラッグ用の注射器、床にはトランペットが放置されていた。刑事のルーカス(ハイス・ナバー)は死者の謎を解くため捜査を始める。

 チェット・ベイカーは、1929年オクラホマ州イエールに、ギタリストの父と、ピアノを弾く母との間に生まれた。12歳の時、父親からもらったトロンボーンがきっかけとなり、音楽に関心を持つようになった。その後はトランペットに持ち替え、52年、サックス奏者の巨星チャーリー・パーカーに認められツアーに参加、音楽活動は本格化する。54年には初のアルバム「チェット・ベイカー・シングス」を制作している。これはボーカルアルバムで、哀愁のあるトランペットの音色と、語りかけるような歌声のコラボは人気を博すことになる。

 映画でも彼の演奏シーンが幾つか登場する。「マイ・ファニー・バレンタイン」などのスタンダードの名曲のカバー、そして題名でもある「マイ・フーリッシュ・ハート」。薄暗いライブハウスで唄うチェット・ベイカー(スティーブ・ウォール)の寂しげな横顔、少し嗄れた声。

 ルーカス刑事は偉大なジャズミュージシャンの最期の数日を追う。ミステリー仕立ての構成には難があり、迷宮は沈殿したままで、しっくりした結末は見えないのは残念だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (13)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る