岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ジャズ界のスーパースターの事件を基にした、ミステリータッチのフィクション

2020年02月08日

マイ・フーリッシュ・ハート

©2018(PUPKIN)-VPRO

【出演】スティーヴ・ウォール、レイモント・ティリ、ハイス・ナバー
【監督・脚本】ロルフ・ヴァン・アイク

お酒が呑みたくなる映画

 私の友人にはジャズマニアが何人かいる。映画音楽とジャズは親和性が高いのか名曲揃い。若い頃にはジャズの気分に浸りたいと、名古屋の老舗ラブリーなどのライブハウスによく連れて行ってもらった。自分より年上の人ばかりだが、この映画を観た後「チェット・ベイカーってどんな位置づけ?」と聞いたところ「自分がよく聞く時代より一世代前だが、とても有名で凄い人」と教えてくれた。

 本作は、1950年代にウエストコースト・ジャズ界のスーパースターであったチェット・ベイカー(スティーヴ・ウォール)が、ドラッグ漬けのジャンキーとなり、1988年オランダの場末のホテルの部屋から転落して死亡した事件を基にした、ミステリータッチのフィクションである。

 チェットの最後の5日間に焦点を絞った内容で、その真相を探る刑事ルーカス(ハイス・ナバー)もプライベートに悩みを抱えており、チェットの生き様の片鱗が分かってくるにつれて、自らの現状とシンクロしていく。ルーカスは架空の人物という事だが、最後の5日間に関係した人たちの証言を刑事が得ていく設定は、描き方として違和感はない。

 証言するのはマネージャーのピーター、主治医のフィールグッド、ルームメイトのサイモン、最愛の女性サラ。チェットが路上で倒れている時に、ホテルの彼の部屋に見えた人影、残されていたトランペットやドラッグ。不可解な死の真相がおぼろげながら次第に見えてくるが、決め手には至らない。

 分かったことは、チェットの人生は頂点からどん底まで経験した、劇的でスリリングで最後は悲劇的な波乱万丈の一生だったこと。端正な顔立ちと誰をも魅了したトランペットの音色や中性的な歌声とは裏腹に、愛することへの渇望があり孤独であったこと。 

 ロルフ・ヴァン・アイク監督は、フィルム・ノワール調のタッチの映像に、けだるく退廃的にチェットの音楽をかぶせていく。お酒が呑みたくなる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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