岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

差別と闘う魂の叫び

2020年02月07日

ブラインドスポッティング

© 2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED

【出演】ダヴィード・ディグス、ラファエル・カザル、ジャニナ・ガヴァンカー
【監督】カルロス・ロペス・エストラーダ

見えなくなっているものは、臭いものには蓋と同じ

 舞台となるのはカリフォルニア州オークランド。黒人青年コリン(ダヴィード・ディグス)は保護観察の期間をあと3日で終えようとしていた。引越し会社で真面目に勤めているが、同僚で親友のマイルズ(ラファエル・カザル)の自由奔放さがコリンの平穏を掻き乱す。人種の壁を感じさせない友情が2人の関係から見える。

 仕事帰り、パトカーの追跡現場に遭遇する。とばっちりを避けるように徐行停止したコリンは、黒人が警官に撃たれるのを目撃する。それは、無抵抗な人間に対する背後からの発砲だった。

 サンフランシスコ湾の東に位置するオークランドは、かつてはアフリカ系アメリカ人のビジネスの拠点として、また、カルチャーの発生の地として栄えた。60年代の公民権運動が盛んな時期には、ブラック・パワー・ムーブメントやブラック・パンサー党の中心地となった。現在でも、白人、黒人の他にも多種多様な人種が住む街になっている。そこで顕著になるのが、都市社会の構造的な問題である。高級街と貧困街の線引は格差を発生させ、結果的には争いを生み出し、治安を悪化させることになる。

 コリンとマイルズの友情は、オークランドの同等の環境で育つ中で生まれた。しかし、黒人と白人という違いは、普段は抑え込まれているが、根深いところでくすぶり続けている。その均衡を破るのは、マイルズの衝動的な行動で、それはコリンの抑制された時間のバランスを崩すことになる。

 コリンを演じたダヴィード・ディグスは、ブロードウェイで上演されたミュージカル「ハミルトン」でトニー賞を受賞した注目の役者で、黒人音楽のジャズに継ぐ形である”ラップ"の表現者としても知られている。

 マイルズを演じたラファエル・カザルはヒスパニック系のアーティストとして活躍している。ラストの見せ場はこの才能のぶつかり合いである。ラップに馴染めない世代にも、「見えないもの、見ようとしないものを見ろ!」というメッセージは伝わる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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