岐阜新聞 映画部

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カンヌ最高賞はやや期待はずれの出来

2020年04月19日

パラサイト 半地下の家族

©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

【出演】ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
【監督】ポン・ジュノ

尻すぼみに終わった中盤以降の展開

 昨年のカンヌ映画祭の最高賞であるパルムドール受賞作だが、やや期待はずれに終わった。最大の難点は中盤以降の展開にある。物語がどう進行していくのかが興味の中心なのだが、主人公の父親のセリフではないが、「計画のないのが計画」では興味も消え失せる。せっかく導入部は大いに見せるのに、以降の筋に緻密さを欠く。

 序盤、半地下で生活する貧困一家で、大学浪人中の長男は家庭教師としてIT社長の豪邸に出入りするようになり、その妹も絵画教室の先生と偽り、小学生の息子の世話役としてめでたく採用。失業中だった一家が、その後、運転手や家政婦として雇われていくまでの導入部はいい。しかし、その後一家がどうするかはまるで計画性がなく、それがなければ観客も楽しみようがない。家政婦採用時に雇用主の所得証明や不動産謄本などの書類が必要というところで、書類を偽造して豪邸そのものを奪うのかと思ったが、そういう展開にはならない。

 映画の後半は尻すぼみとしか言いようがない。カンヌの審査員たちも韓国の格差問題に目を奪われ高評価してしまったか、と感じる。IT社長一家の子供相手である長男、長女はごまかしが効くとしても、社長の運転手や家政婦が無事務まるのかという疑問も拭えない。もう少し緻密な脚本を要求したい。貧困一家の個々人の個性やスキルを序盤に説明すべきだったのだろう。伏線の回収がないので、腑に落ちる場面も少ない。総じて観る前の期待を下回った。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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