岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

差別と偏見を払拭する信頼と絆の物語

2020年02月02日

だれもが愛しいチャンピオン

©Rey de Babia AIE, Peliculas Pendelton SA, Morena Films SL, Telefonica Audiovisual Digital SLU, RTVE

【出演】ハビエル・グティエレス、フアン・マルガージョ、アテネア・マタ
【監督・共同脚本・編集】ハビエル・フェセル

バスケットチームから見える社会のあるべきかたち

 プロローグ。違法駐車の車に違反切符を切る係員。そこに車の持ち主が現れる。「5分しか停めていない」「法定時間の超過を確認した」すれ違いの問答があり、持ち主の男は切符を握り潰して「君は忠実な仕事をしている」と捨て台詞を残して駐車場を後にする。

 車の持ち主マルコ(ハビエル・グティエレス)はプロバスケットボールのサブコーチをしている。試合中、防戦一方のチームに苛つき、タイムアウトの作戦会議では監督と対立し、まさかの殴り合いになってしまう。そのままチームを解雇されたマルコは、自棄酒をあおり、茫然自失の状態で帰宅途中に接触事故を起こすのだが、その相手はパトカーだった。

 マルコは何に苛ついているのか?その惨状は救いようもない。裁判では懲役の代わりに90日間の社会奉仕活動を命じられる。

 昨年公開されたイタリア映画『トスカーナの幸せレシピ』は、喧嘩沙汰を起こしたシェフが、代替刑としてアスペルガー症候群の人たちが通う施設で料理指導を命じられる話だった。本作もよく似た設定で、代替刑という刑罰が登場するが、これは欧米では広く適用され、映画にもよく登場する。日本でも代替刑の法整備に関する諮問が、過去に議題に上ったことはあったが、最近はその議論が行われた形跡すらない。確かに、犯罪者を受け入れる側の立場もあるのだから、簡単ではないと理解はできるのだが…。

 マルコが指導することになるのは知的障害者たちのチーム"アミーゴス"だった。知的障害者と言っても様々で、マルコの差別的に凝り固まっていた概念は一切通用しない。施設長の言う「彼らは皆、自立している」を手がかりに、ひとりひとりの個性に目を向けることになる。

 出演者はオーディションで選ばれた人たちで、脚本はそこから当て書きがされた。正しくそれぞれの個性を見つめる実践が行われたことになる。コミカルなシーンに遭遇した時、笑いを躊躇う瞬間がある。それこそが差別と気づくこと、そこに新たな展望が見えてくる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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