岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

児童文学作家が誕生するまで

2020年01月20日

リンドグレーン

© Nordisk Film Production AB / Avanti Film AB. All rights reserved.

【出演】アルバ・アウグスト、マリア・ボネヴィー、マグヌス・クレッペル、ヘンリク・ラファエルセン、トリーネ・ディアホム
【監督・脚本】ペアニレ・フィシャー・クリステンセン

少女から大人の女性へ、駆け抜けた大切な時間

 薄暗く静かな部屋にひとりの女性がいる。逆光によってシルエットになったその表情は見えない。卓上にはたくさんの書簡や葉書がある。そこには子どもの手によって描かれた絵があり、女性にあてたであろう本の感想や感謝が子どもの声で語られる。

 児童文学作家のアストリッド・リンドグレーンは、1907年、スウェーデン南東部スモーランドのヴィンメルビューで4人兄弟姉妹の長女として生まれた。生家は教会から土地を借りて営まれている小さな農場だった。

 列を連ねた家族が畑にジャガイモの種芋を蒔くうちに、ふざけあいになる様子は、仲睦まじい幸福な幼年期を象徴している。日曜の教会の礼拝では、何故かうわの空のアストリッド(アルバ・アウグスト)を母親のハンナ(マリア・ボネビー)はひどく気にかけている。自由で闊達なアストリッドには、保守的な田舎の暮らしに息苦しさを感じていたのかも知れない。母はそれを敏感に感じ取っていた。

 ある日、アスリッドの文才に目をとめた、街の新聞社から就職の誘いがかかる。

 アストリッド・リンドグレーンの著作は世界70カ国語以上に翻訳され、100を超える国で出版されている。「長くつ下のピッピ」「ロッタちゃん」「やかまし村の子どもたち」はシリーズ化され、映像化もされている。彼女の作品が何故、世界中から愛されるようになったか?

 映画は伝記ものとしては珍しく、16歳からの数年間にのみ焦点を当てている。それは少女から大人の女性へと成長する濃密な時間で、恋、妊娠、子育てという階段が描かれる。そして、姦通罪がまだ成立していた20世紀初頭の保守的な時代であったことが、彼女の苦難を増幅させたのだが、そこで育まれた子どもとの触れあい、大切な時間の経過が、後の創作に反映されたことも確かなことだろう。

 アストリッドを演じたアルバ・アウグストはデンマークの巨匠ビレ・アウグスト監督の娘で、繊細な役柄を鮮烈に演じている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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