岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

読書好きの子とかつてそうだった大人に、是非観てもらいたい映画

2020年01月20日

リンドグレーン

© Nordisk Film Production AB / Avanti Film AB. All rights reserved.

【出演】アルバ・アウグスト、マリア・ボネヴィー、マグヌス・クレッペル、ヘンリク・ラファエルセン、トリーネ・ディアホム
【監督・脚本】ペアニレ・フィシャー・クリステンセン

おとなしくて引っ込み思案な子にとって、リンドグレーンのお話は生きる希望になる

 将来、本や映画が好きになる人は、幼少期に読んだ本や観た映画が決め手になるだろう。私も映画好きの原点は、実は小学校の時に読んだ「十五少年漂流記」だったりする。

 世界中の子どもたちに愛されている“世界一つよい女の子”が主人公の「長くつ下のピッピ」は、スウェーデンの児童文学作家リンドグレーンの代表作で、本の生誕75周年の今年、神戸と鳥取で展覧会が開催される。こんな素敵な本と出会える子ども達は、将来きっと本好きになるだろう。ついでに映画好きになってくれるともっと嬉しいが(笑)。

 映画の冒頭、世界中の子どもたちから届く感謝の手紙。ひとつひとつ丁寧に読んでいくアストリッド・リンドグレーンの脳裏によぎるのは、おしゃまでお転婆だった少女時代の事である。

 16歳のアストリッド(アルバ・アウグスト)は、タメ年の男の子達には全く相手にされずダンスも友人の女の子と踊るばかり。奇妙な身ぶり手ぶりの踊りは、みんなから失笑を買っている。こんな恵まれない少女時代ではあったが、得意の文才を生かして就職した地方新聞社のオーナー兼編集長とは、よからぬ関係に発展していく。

 1920年代のスウェーデンでは、女性は差別され男の子と一緒の門限では家に帰れない。そんな中でアストリッドは衝動的で自己中心的な行動をとっていくが、それは宗教や社会の掟に縛られず新たな女性像を作っていく原動力となっていくのである。

 不倫の関係で生まれた長男からは、なかなか本当のママだとは言ってもらえず、悲しむアストリッドだが、そんな事で決してめげたりはしない。彼女はピッピのようにつよいのだ。いやピッピがつよいのは、アストリッドそのものなのだ。

 子ども時代が明るく元気な子ばかりではない。おとなしくて引っ込み思案な子にとってリンドグレーンのお話は、生きる希望になっていく。読書好きの子とかつてそうだった大人に、是非観てもらいたい映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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