岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

落し物からはじまる驚愕のスリラー

2020年01月14日

グレタ GRETA

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【出演】イザベル・ユペール、クロエ・グレース・モレッツ、マイカ・モンロー、コルム・フィオール、スティーヴン・レイ
【監督・脚本】ニール・ジョーダン

バッグには罠がある。優しさには毒がある。

 ニューヨークに住むフランシス(クロエ・グレース・モレッツ)は、高級レストランのウェイトレスをしている。最近母を亡くし、いまも心に空いた隙間を埋められずにいた。

 ある仕事帰りの夜、地下鉄の車内で置き忘れたバッグを見つける。そのまま持ちかえり、中を検めたところ、持ち主はグレタという女性のものであることが判る。その住居に心あたりがあったからか?さほどの手間を感じなかったからか?フランシスはバッグを直接届けることにする。訪ねた先には、人あたりの良さそうな初老の女性グレタ(イザベル・ユペール)がいて、わざわざ届けてくれたことを感謝し、家に招き入れ、コーヒーを振る舞ってくれる。

 この導入部分はかなり強引な印象を受ける。落し物を何故そのまま持ち帰ったのか?何故、直接家にまで届ける手段を選んだのか?

 グレタは夫を亡くし、ひとり娘はパリに留学中で、独居生活をしていると身の上を語るが、そこに喪失の寂しさを感じたフランシスは、自らの境遇と重ね親近感を覚える。そして、再会の約束をすることになる。

 スリラー映画の常套である、少しの疑問と平穏な描写、その影に散らつく不穏な雰囲気をたたえたここまでの序盤は上手い。

 そして、何度目かの訪問の時、クローゼットの中に並んだあのバッグの存在を知ることでストーリーは一気に加速する。

 グレタを演じたイザベル・ユペールは優しげな包容力と、孤独の陰を内包させ、次第に増殖する妖しさを怪演している。フランシスを演じたクロエ・グレース・モレッツは幼なさと大人の女性の狭間にある微妙な感情の揺らぎを、ユペールの受けにまわりながらも好演している。

 監督はベテランのニール・ジョーダンで、室内シーンの怪しげな重厚感、夜の街の空虚な空間がグレタの存在によって一変、圧迫感を誘導する自在で巧妙な演出が上手い。残念なのは、終盤の展開を急ぎ過ぎたことで、唐突なばたつき感がなんとも惜しい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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