岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

登場人物と同化させ感情を揺さぶることが恐怖に繋がる

2020年01月14日

グレタ GRETA

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【出演】イザベル・ユペール、クロエ・グレース・モレッツ、マイカ・モンロー、コルム・フィオール、スティーヴン・レイ
【監督・脚本】ニール・ジョーダン

前半戦でニール・ジョーダン監督の術中にまんまとはめられていく

 本作のジャンルは、人間の狂気を描くことで映画の中のターゲットとスクリーンの前の観客の双方を追い詰め、震え上がらせるサスペンス・スリラー映画である。この分野の第一人者は言わずと知れたヒッチコック。彼はトリュフォーとの対談の中で「エモーションこそサスペンスの基本的要素だ。」と答えている。知的なパズル・ゲームのような謎解きでなく、観客を登場人物と同化させエモーション(感情)を揺さぶることが恐怖に繋がるのだ。

 本作はスリラーによくあるストーカーものである。が侮るなかれ、何しろストーカーするのは、経営する建設会社の工事現場が崩壊(『ハッピーエンド』)しようが、男にレイプ(『エル ELLE))されようが、全く動じない女を演じてきた鉄の女イザベル・ユペール様(役名グレタ)なのだ。クロエ・グレース・モレッツ(役名フランシス)などという最近売り出し中の小娘などが簡単に逃げられるわけないのだ。貫禄が違うのである。

 一度気を許したが最後、自分に都合のいい答えが返ってくるまで、執拗で粘着質的な行為はエスカレートしていく。仕事中でも家にいても、自分の都合でかかってくる電話。出なければ同一文面のメッセージが何十回も入ってくる。これ、観客の中にも「あるある」の人が多いような気がする。怖すぎる!

 で、次は直接行動。職場や通勤途中に現れて「会えない理由」を自分が納得するまで問い詰める。埒があかなくなるとブチギレる!何だかこれもあり得そうで、他人ごとではなくなってくる。観客は、前半戦でニール・ジョーダン監督の術中にまんまとはめられていくのである。

 何のためにグレタはフランシスに付きまとうのか?一方的な母性の押し付けのような気もするし、もしかしたら単なるサイコパスかもしれない。いやそんな事はどうでもいい。観客が椅子から飛び上がって、キャーとなれば監督の勝ちなのだ。本作、何度か声が出ちゃいました。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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