岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

孤高の泥棒が対峙する闇の先の過去

2020年01月13日

影踏み

©2019「影踏み」製作委員会

【出演】山崎まさよし、尾野真千子、北村匠海、滝藤賢一、鶴見辰吾、大竹しのぶ ほか
【監督】篠原哲雄

横山秀夫ミステリーの異色作を映画化する苦心

 一口に窃盗犯と言っても様々で、空き巣やピッキング、窓ガラスを破る三角割りや焼き破りなど、方法や手段でその呼び方も異なる。人の寝静まった深夜に住宅に忍び込み、現金のみを持ち去るそれを"ノビ師”と言う。寝室の住居人が高鼾をかく側で、物色する様子はスリリングだが、わざわざこの方法を選ぶ窃盗犯には、言い方はそぐわないが、崇高な雰囲気が漂う。

 真壁秀一(山崎まさよし)は、地元警察から「ノビカベ」の異名で呼ばれる凄腕のノビ師だった。ある夜、侵入した住居で、家に火を放とうとする女に出会う。寝室にはその女の夫らしき男がいた。真壁は女の放火を寸前に止めるが、その直後に、その家に駆けつけて来たと思しき刑事の吉川(竹原ピストル)に逮捕されてしまう。そして、吉川は真壁の幼なじみでもあった。

 原作は『半落ち』(04、佐々部清監督)、『クライマーズ・ハイ』(08、原田眞人監督)、『64-ロクヨン-』(16、瀬々敬久監督)と、作品の多くが映画化されている横山秀夫。小説「影踏み」(祥伝社)は、様々な事件に巻き込まれるノビ師を主人公にした連作集となっている。

 真壁は2年の刑期を終え出所してくる。出迎えるのは真壁を「修兄ィ」と慕う若者・啓二(北村匠海)で、逮捕され宙ぶらりんになったままの疑問を解明するために動きだす。

 逮捕されたあの夜、家に火を放とうとしていた葉子(中村ゆり)という女の行方を追ううちに、その周りに絡み合う幾つもの糸と、裏社会の連環が見えてくる。

 謎の解明のため愚直に行動する頑固な真壁を、必死に止めようとする恋人の久子(尾野真千子)。自らの流儀を貫く兄貴の頑なさを、微妙な距離感で支える啓二。闇から浮かび上がる新たな人物たち。そして、真壁がたどり着くのは自らの消せない過去との対峙だった。

 複雑な展開の物語には隠れた関連性があるので、緊張感はある程度持続されるが、次第に尻切れ感が所々に露呈して、詰め込み過ぎの破綻となってしまうの少し残念な気がする。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (9)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る