岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

謎解きで失速する残念なミステリー

2020年01月13日

影踏み

©2019「影踏み」製作委員会

【出演】山崎まさよし、尾野真千子、北村匠海、滝藤賢一、鶴見辰吾、大竹しのぶ ほか
【監督】篠原哲雄

緊迫感もあり、全体のテンポも良いので退屈はしない

 本作は泥棒がとある事件を目撃し、その謎を解き明かすミステリー映画だ。こう聞いて私の中には山本薩夫監督の『にっぽん泥棒物語』が浮かんだ。もちろん、この傑作と比べるなどという意味のないことをするつもりはないが、本作も泥棒が事件を解決するという着想の面白さとミステリーとしての面白さで楽しませてくれるのだろうと期待していた。しかし、蓋を開けてみればその期待は見事に裏切られることとなった。

 確かに冒頭の雰囲気はなかなか良く、薄暗い室内での描写は緊迫感に満ちている。また、主人公・真壁(山崎まさよし)のキャラクターもクールかつ知的で魅力的だ。しかし、映画が進むにしたがって少々嫌な予感がしてくる。“まさか、この人が犯人なわけないよな…”。その嫌な予感は見事に的中。ストーリーはかなり大規模に展開していくにも関わらず、結末はあまり関係ない、小さなところに落ちる。動機もストーリーの規模の割にかなり小さい。これでは壮大な肩透かしを食わされた気分である。また、本筋の事件にもう1つの事件が絡むのだが、こちらも絡みが薄いのである。真壁にとっては重要な事件なのだが、2つの事件が結びつかず、真壁の身に独立した2つの事件が降りかかっただけ。少々散漫な印象を受ける。

 そして、映画の冒頭から真壁について回る弟(北村匠海)の存在がさらなるマイナスである。実はこの弟の正体がかなりのクセ者であり、すべてが明らかになったとき、いろいろと矛盾が生じてくる。やろうとしていること自体は悪くなく、過去にもその手の作品はいくつもあるが、本作ではそれが成功しているとは言えないだろう。

 描写自体は緊迫感もあり、全体のテンポも良いので退屈はしない。しかし、ミステリーとしての脚本が弱く、事件の真相も薄い。そして、先述の弟の描き方。この2点が本作における最大の難点であり、前半が悪くなかっただけに後半の失速が惜しまれる作品である。

語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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語り手:天野 雄喜

中学2年の冬、昔のB級映画を観たことがきっかけで日本映画の虜となり、現在では24時間映画のことを考えながら過ごしています。今も日本映画鑑賞が主ですが外国映画も多少は鑑賞しています。

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