岐阜新聞 映画部

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画家としてのイマジネーションの源泉を探った、新ゴッホ映画

2020年01月03日

永遠の門 ゴッホの見た未来

© Walk Home Productions LLC 2018

【出演】ウィレム・デフォー、オスカー・アイザック、マッツ・ミケルセン、マチュー・アマルリック
【監督・脚本】ジュリアン・シュナーベル

現実というより、ゴッホの目を通した風景として描かれていく

 新表現主義の代表的画家であるジュリアン・シュナーベルが監督した本作は、ゴッホを世に認められず貧乏で破滅的な人生を送った画家だったとステレオタイプに描いてはいない。ゴッホの心象風景ともいえる美しい景色や、無造作に脱ぎ捨てられた靴などの生活の中から、彼が何を描こうとし何を伝えたかったかを考察した、画家出身の監督らしい絵画のような映画である。

 ゴッホ(ウィレム・デフォー)は、知的だが繊細な性格が災いしてか、伯父の紹介で就いた画商の店員も、その後に望んでなった聖職者もうまくいかず、27歳の時1人でできる画家の道を目指すこととなる。

 生前は1枚しか絵が売れず孤独で貧乏だったとされるゴッホだが、弟のテオ(ルパート・フレンド)は、兄が働かなくてもいいほどの仕送りをして画家としての生活を支え、ゴーギャン(オスカー・アイザック)は一時的に共同生活を送る。少なくない人たちがゴッホに寄り添っていたように、シュナーベル監督も徹底的にゴッホに寄り添い、我々にゴッホの目から見たかのような究極的な主観映像で、心象風景を見せてくれる。

 南仏アルルの街の郊外に広がるオレンジ色の麦畑、糸杉の見える花咲く果樹園、陽光に輝く跳ね橋。映画は現実のリアルな風景というよりも、ゴッホの目を通した風景として描かれていく。こんなシーンにはセリフもナレーションもいらない。スクリーンの前の我々は、ただ感じればいいのだ。それがゴッホが描いた絵画の魂に通じるのだ。

 37歳で亡くなったゴッホの活躍は10年に過ぎない。晩年には批評家も注目しだし評価されていく。もう少し生きていれば、大家として認められたに違いない。死因も自死でなく、少年たちのいたずらによる誤射だと描かれる。

 ゴッホをただ単に不遇な画家、耳切り事件など狂気の作家としてのみ描いていないところがいい。彼の画家としてのイマジネーションの源泉を探った、新ゴッホ映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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