岐阜新聞 映画部

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ナチス占領下の島で起きた絆の物語

2019年12月27日

ガーンジー島の読書会の秘密

© 2018 STUDIOCANAL SAS

【出演】リリー・ジェームズ、ミキール・ハースマン、グレン・パウエル、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、キャサリン・パーキンソン、マシュー・グード、トム・コートネイ、ペネロープ・ウィルトン
【監督】マイク・ニューウェル

不在のままの謎の女性を追うミステリー仕立ての佳作

 ガーンジー島はイギリス海峡にあるチャネル諸島の中で1番大きな島である。地理的にイギリス本島よりもフランスに近かったため、第二次世界大戦中は、イギリスで唯一ナチスの占領下にあった。郵便は止められ、通信網は切られ、完全な孤立状態にあった。

 1941年のとある夜、夜間外出禁止令の中、4人の島民がほろ酔いで歩いているところをドイツ兵に咎められる。"ガーンジー島文学ポテトピールパイ同行会"の帰りだと告げると、お咎めなしで解放される。何故かナチスは文化活動には目をつぶってくれた。しかし、島には陰鬱な雰囲気が立ち込めていた。

 1946年、終戦まもないロンドンで暮らす作家のジュリエット(リリー・ジェームズ)は、ガーンジー島出身者が書いた1冊の本を手に入れたことをきっかけに、島にある読書会のメンバーと手紙を交わすようになる。何度かやりとりするうちに、読書会に興味を持ち、直接取材するために島に渡ることになる。

 ジュリエットが島に到着し、読書会が開かれる家に着くと、会員たちが温かく迎え入れてくれた。一見和やかな雰囲気で談笑が進むが、読書会のことを記事にしたいという申し出には、快い返事をしてもらえない。読書会の創設者であったエリザベスのことになると、みんなの顔が曇りがちになるのだが、彼女は外国に行ったまま帰らないことや、娘のキットを会員のひとりのドーシーが預かっていることを知る。

 島での取材を継続したジュリエットに、頑なだった読書会のメンバーも次第に心を開いてくれるようになるのだが、エリザベスについての謎は深まるばかりだった。

 ミステリー仕立ての展開は、戦争中のナチス占領下の島で起きた事実を少しずつ紐解いていく。読書会のメンバー以外の島民たちは、エリザベスについて全く違う証言をする。

 小さな島の小さな共同体のような読書会に生まれた人のつながり。戦争という暗く冷たい影の中で生まれた絆が心にしみる佳作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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