岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

音楽を体験するロマンチックコメディーの快作

2019年12月21日

イエスタデイ

©Universal Pictures

【出演】ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ、ジョエル・フライ、エド・シーラン、ケイト・マッキノン、ジェームズ・コーデン
【監督】ダニー・ボイル

夢、友情、愛情がビートルズの名曲とシンクロする快感

 ジャック(ヒメシュー・パテル)は売れないシンガーソングライター。一端の夢は持っているが、将来の展望も見えないし、さえない現状を自覚しつつある。ハイスクール時代からの親友で、マネージャーを務めるエリー(リリー・ジェームズ)は、ジャックの落ち込んだ気分を盛り上げようと、ミュージックフェスの出演を決めたり叱咤激励する。それでも、近頃の鈍い反応にはさすがに肩を落とすのだが、根っからの前向きな明るさが彼女らしさでもある。

 ある夜、自転車で仕事帰りのジャックは交通事故に遭遇…その時、世界は12秒間停止する。

 ファンタジー系のタイムスリップもの?と思わせる展開だが、これはタイムスリップではない。再始動後の世界は変わらず機能を再開するし、一見、何ら変化はないように見える。

 ところが、ジャックがさり気なく口ずさんだ歌に反応した友人たちの様子は尋常ではない。自分ひとりが取り残されて、冗談か何かに付き合わされているのかと苛ついたりするが、ジャック以外は共通する認識のなかにいた。

 そして、ジャックは事故で失った前歯以外にも、世界から無くなったものがあることを知る。

 脚本は『ノッティングヒルの恋人』(1999)、『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)、『ラブ・アクチュアリー』(2003、兼監督)を手掛けたリチャード・カーティスが担当している。洒脱な会話とお洒落なストーリー展開を持ち味としたロマンチックコメディーを得意としいるが、その持ち味は本作でも存分に活かされている。

 監督は2008年に『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー監督賞を受賞したダニー・ボイル。デビュー当時は異端のイメージがあったが、今や多彩なジャンルをこなす職人肌に転じている。

 世界中の誰もが知っていたはずのビートルズを自分だけのものにしたジャックの運命は激変していくのだが、その裏にある格闘と苦悩をきっちりと描き、あり得ないお話にリアリティーを与えている。名曲誕生の裏話を隠し味に、とっておきの出会いまで用意された快作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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