岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

創作の軌跡に迫るドキュメンタリー

2019年12月20日

ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝

©2018- 3D Produzioni and Nexo Digital – All rights reserved

【案内人】ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
【監督】ジョヴァンニ・ピスカーリア

ゴッホに恋した夫人が作った森に囲まれた美術館への誘い

 フィンセント・ファン・ゴッホが1890年に自ら命を絶つまで、その作品に買い手は現れなかったという。画家としての活動期間はわずか10年だが、残された作品は多く、現存するものでも2000点に及ぶ。そのほとんどを遺族が所有していたため、彼の作品が世に出て評価の対象となることはなかった。

 ゴッホは、美術史的には後期印象派の画家として位置づけされる。日本の浮世絵を中心とした、所謂ジャポニズムの影響を強く受けている。彼が日本でこよなく愛されているのは、そんな事に親しみを感じるからかも知れない。

 ヘレーネ・クレラー=ミュラーは1869年、ドイツの実業家の父のもとに生まれた。88年にオランダの貿易商アントン・クレラーと結婚してオランダに移住し、4人の子どもにも恵まれた。娘の教育のためにと参加した美術鑑賞講座で美術に触れると、たちまちその虜となった。ゴッホとの出会いは画家の死から20年ほど後のことだった。

 『ゴッホとヘレーネの森』は、ゴッホの出身地でもあるオランダにあるクレラー・ミュラー美術館で、ゴッホ研究に携わるスタッフの証言をもとに、その人物像と、彼の作品が世界の人々を引きつける理由に迫ったドキュメンタリーで、イタリアで開催された展覧会に合わせて製作された。

 クレラー=ミュラー夫人が本格的な美術収集家になったのは、大病を克服した1911年頃からのことで、ゴッホ以外にもピカソ、スーラ、モンドリアンなどの、当時の最先端だったアーティストたちの作品をコレクション化し、夫の会社の一角でギャラリーを開設し一般公開している。その後、コレクションはオランダ国家に寄贈され、38年には国立クレラー=ミュラー美術館が開館した。

 美術館はアムステルダムから電車で1時間、さらにバスを乗り継いだ先にある、デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内にある。宏大な森に囲まれたそこには、夫人の想いとともに愛すべきゴッホの傑作が静かに展示されている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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