岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

クリエイティブを考察するドキュメンタリー

2019年12月17日

天才たちの頭の中 世界を面白くする107のヒント

© 2018 Emotional Network

【出演】デヴィッド・ボウイ、ウィレム・デフォー、ダライ・ラマ法王14世、スティーヴン・ホーキング、北野武、サーシャ・クロコヴァ、ネルソン・マンデラ、ジョージ・R・R・マーティン、オノ・ヨーコ、クエンティン・タランティーノ、アイ・ウェイウェイ、ヴィヴィアン・ウェストウッド、山本耀司 ほか
【監督・製作】ハーマン・ヴァスケ

クリエイターたちの反応を見るだけでも楽しい

 映画のデジタル革命は、フイルムの存在意味を変えた。ビデオソフトが家庭にまで進入した頃、映画館で映画を観ることの意味は、フイルムへの信頼によるところが大きい。デジタル化は質の問題をクリアしたことで、量と手間の軽減で、はるかに勝るデジタルへと急激に移行した。それは上映の形態の変化に止まることなく、撮影を主体とする映画づくりにまで変革をもたらした。その最大の利点はフイルムに要したコストをなくしたことであり、そのひとつとして映像作家がカメラを"ペン化"することに活かされた。ドキュメンタリーが量産されるようになったのは、デジタル革命の恩恵であろう。

 『天才たちの頭の中 世界を面白くする107のヒント』のハーマン・ヴァスケ監督は広告代理店のクリエイティブ部門に勤めていた。そこで彼が囚われたのは「クリエイティブとは何か?」という、素朴だが根幹に関わる疑問だった。

 広告業界ではクリエイティブは広告制作物のことを言い、企画制作されたコンテンツそのものを指し、それに携わる人をクリエイターと呼ぶ。しかし、それは業界限定ではなく、芸術や文化の創造といった全般に及ぶ。"クリエイティブな仕事"が曖昧な解釈となるのは致し方ない。この不明な部分に踏み込もうとしたヴァスケ監督の初動のきっかけは真っ当なのである。

 「あなたは何故クリエイティブなのですか?」という問いをクリエイティブな人物に投げかける。手持ちカメラとスケッチブックを手に、ヴァスケは世界中を駆け回った。基本的にはアポなし、インタビューを敢行するのは路上であったり、対象者は不意を突かれるから、パパラッチやストーカーと勘違いされかねない。その数は1000人に及ぶが、本作ではそれを107人に絞っている。それぞれのリアクションからして面白いが、30年の時間経過と相関性が整理されているとは言い難く、曖昧な疑問はさらなる混沌にはまり込んだとしか見えないのは、皮肉な誤算だ。これがデジタル化以前の、ドキュメンタリー制作が困難な時代に始まったことを考えれば大変な労作なのだが…。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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