岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

シンプルな質問一本で30年以上質問し続けてきた私家版みたいなドキュメンタリー

2019年12月17日

天才たちの頭の中 世界を面白くする107のヒント

© 2018 Emotional Network

【出演】デヴィッド・ボウイ、ウィレム・デフォー、ダライ・ラマ法王14世、スティーヴン・ホーキング、北野武、サーシャ・クロコヴァ、ネルソン・マンデラ、ジョージ・R・R・マーティン、オノ・ヨーコ、クエンティン・タランティーノ、アイ・ウェイウェイ、ヴィヴィアン・ウェストウッド、山本耀司 ほか
【監督・製作】ハーマン・ヴァスケ

映画に登場する107名という人数は絶妙で、これ以上割り切れない素数

 「あなたはなぜ成功したのですか?」という質問にはすぐに答えられても、「あなたはなぜクリエイティブなのですか?」との予期せぬ問いには、思わず人間性が出てきてしまうようだ。

 本作は、広告代理店出身のドキュメンタリー作家ハーマン・ヴァスケ監督が、このシンプルな質問一本で、世界中の有名人にブレずに折れずにへこたれず、30年以上質問し続けてきた私家版みたいなドキュメンタリー映画である。

 映画に登場する107名という人数は絶妙で、これ以上割り切れない素数である。1人として同じ考えの人はおらず、個性豊かな人たちが、それぞれの思う「クリエイティブ」を答えていく。

 映画の構成は、デヴィッド・ボウイが「連続したものより、断片的なものの方がいつも心地よい」と答えた如く、編集は時代も人も自由自在に飛び回っている。まさにこれが監督の狙いで、「何がヒントになるかは、観ているあなたが考えなさい」という提示なのだ。

 ボウイはインタビューの際、ヴァスケ監督を彼に背を向ける形で窓際に立たせ、自分はソファーに座って答える。ジム・ジャームッシュは、「犬は理解できない時、違う角度から見ようとする」と言う。こういうシュールな場面や人を食った受け答えで、クリエイティブとは何ぞやをさらに深めていく。

 クリエイティブという概念の答えはそれぞれでも、私なりに見えてきたのは、デヴィッド・リンチが言うように「抽象的なアイデアを、具体的に形を持ったものにしていく」事であり、創造するとは、具体化し実行できる力なのだ。目標に向かって愚鈍に諦めずに追い求め続けられる力が、凡人との違いなのだ。

 日本映画界からは北野武が登場し、「性欲とか食欲とか、人間の基本的な欲望をいかに自分の精神で制御するかが勝負だと思う。」と言う。案外まともな答えである(笑)。

 107名で88分という短い映画だが、示唆に富んだ作品である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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