岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

奇跡の脱出劇を描いた感動実話

2019年12月07日

ホテル・ムンバイ

© 2018 HOTEL MUMBAI PTY LTD, SCREEN AUSTRALIA, SOUTH AUSTRALIAN FILM CORPORATION, ADELAIDE FILM FESTIVAL AND SCREENWEST INC

【出演】デヴ・パテル、アーミー・ハマー、ナザニン・ボニアディ、ティルダ・コブハム・ハーヴェイ、アヌパム・カー、ジェイソン・アイザックス
【監督・脚本・編集】アンソニー・マラス

無差別テロに遭遇したホテルマンたちの勇気

 インド・ムンバイで身重の妻と幼い娘と暮らすアルジュン(デヴ・パテル)は、出勤前の慌ただしい朝を迎える。彼が勤めるのは五つ星の評価を持つ歴史あるタージマハル・パレス・ホテルで、朝礼では厳しい服装チェックがあり、靴のことで指摘を受けてしまう。

 一方、緊張感を漂わせた、不穏な雰囲気の若者の一団が街に到着する。予め計画された行動で四方に散って行く。いつもの日常は突然の銃声によって掻き乱されることになる。

 『ホテル・ムンバイ』は2008年11月26日に起きた同時多発テロに材をとった実話もので、ホテルに閉じ込められた宿泊客と従業員たちと、イスラム武装テロリストの闘いを描いている。

 まず、この事件の記憶が曖昧であることに驚く。世界各地で発生しているテロ事件が、個別の記憶を薄めてしまっていると言い訳できるかも知れないが、個人的には、この10数年前の事件の印象は希薄になっていた。

 標的となったのは、劇中でも映し出されるチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅、レストランのほか、病院、ユダヤ教正統派の集会所、映画館など10数ヶ所で、ホテルはタージマハル・パレス・ホテルのほかにも、同じく五つ星のオベロイ・トライデント・ホテルが狙われている。死者は172人(174人という発表もある)、負傷者は239人におよび、解放には3日間を要した。

 アルジュンの配属するレストラン部は、宴会場や調理場といった複数のスペースを有し、搬入口などの出入口があったため、立てこもりの発生直後に、建屋の外に逃げるという選択肢が可能であった。残るという道を選んだのは、宿泊客を守るというホテルマンの誇りなのが、些か不謹慎な言い方だが「カッコいい」。

 宿泊客にはアメリカ人建築家のデヴィッド(アーミー・ハマー)がいて、部屋に取り残された赤ん坊の救出のため、ある決断をするのだが…。

 監督のアンソニー・マラスは、人々の恐れ、怒り、哀しみを繊細に描きつつ、緊迫感を絶やすことない演出力で、とても長編第1作とは思えない秀作に仕上げた。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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