岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

女性指揮者のパイオニアの感動実話

2019年12月09日

レディ・マエストロ

©Shooting Star Filmcompany - 2018

【出演】クリスタン・デ・ブラーン、ベンジャミン・ウェインライト、スコット・ターナー・スコフィールド
【監督・脚本】マリア・ペーテルス

信念を貫いたアントニア・ブリコの生き様を数々の名曲とともに

 ニューヨークにあるコンサートホールで案内係として働くウィリー(クリスタン・デ・ブラーン)は、演奏会の開演直前に、観客席の通路最前列に椅子を置いて座るという大胆な行動に出る。周りからの好奇の視線も非難のざわめきも意に介することなく、ただ、オランダの指揮者メンゲルベルクの一挙手一投足を間近で見たい、という衝動的な誘惑が理性を超えてしまったのだが、ホールの経営者の息子フランク(ベンジャミン・ウェインライト)は、それを見逃すはずもなく、ウィリーはホールから追い出され、仕事もクビになってしまう。

 オランダからの移民だったウィリーの両親は貧しく、指揮者になるという少女の夢は別世界の話のようだった。しかし、何としても夢を叶えたいという願いは消えることはなく、その方法として、音楽学校への入学を目指すのだが、そこにはいくつもの苦難が待ち構えていた。

 後に、ウィリーからアントニアと名前を変えるアントニア・ブリコは、1930年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でタクトを振る最初の女性指揮者となった。『レディ・マエストロ』は彼女の辿った人生の実話をもとにしている。

 音楽学校の試験には合格できたウィリーだったが、両親からは養子であった秘密を明かされた上、家を追い出されてしまう。途方にくれた彼女を救うのは、ナイトクラブを経営するロビン(スコット・ターナー・スコフィールド)という男で、ピアノ弾きの仕事をくれた上、宿なしとなった彼女に自らのアパートの部屋を与えてくれるのだった。

 アントニア・ブリコ没後30年にあたる今年、世界のクラッシック音楽界では、女性が各地で主席、常任の指揮者を務めている。

 アントニア・ブリコにはフランクとの間に熱く心温まるロマンスがあったが、それは叶うことはなかった。そこには、女性としての生き方のある程度の断念が見える。それは、ロビンがトランスジェンダーであったことを含め、生きづらい時代を生きた彼女たちの闘いの記録でもある。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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