岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

女性の権利獲得と自己実現のための音楽映画

2019年12月09日

レディ・マエストロ

©Shooting Star Filmcompany - 2018

【出演】クリスタン・デ・ブラーン、ベンジャミン・ウェインライト、スコット・ターナー・スコフィールド
【監督・脚本】マリア・ペーテルス

類まれなる音楽的センスと、誰にも負けない情熱が、性別を超えて応援したくなる

 2019年9月、若手指揮者の登竜門として知られ、かつては小澤征爾さんや佐渡裕さんも優勝した事のあるフランス・ブザンソン国際指揮者コンクールにおいて、沖澤のどかさんが優勝したのは記憶に新しい。すでに日本人女性指揮者としては、松尾葉子さん、西村智実さん、三ツ橋敬子さん等が国際的に活躍されており、数は多くないがクラシック音楽界に存在感を放っている。

 そういう彼女たちが活躍できているのも、今もはびこる女性蔑視の中で、果敢に道を切り開いてきた先人があっての賜物である。

 本作は、女性指揮者のパイオニアであるアントニア・ブリコ(クリスタン・デ・ブラーン)の半生に焦点を当て、何故彼女が実質的な女性プロ指揮者の草分けとなれたのか、前人未到の目標に向かって果敢に挑んでいく生き様を追っていった、女性の権利獲得と自己実現のための音楽映画である。

 指揮棒を振るのに腕力や筋力の差はほとんど関係ない。必要なのは、楽譜を読み取り曲を深く知る力、演奏者の表現力を高める力、団員をまとめる統率力などだ。要するに男女の性差は一切関係ない。

 映画は、ナイトクラブでピアニストとして糊口を凌ぐブリコの、一瞬の音も聞き逃さない驚くべき耳の良さを、映像で何度も示してくれる。困難を突破するには、男性と同じではだめで、男性を凌駕するほどの音楽性が必要なのだ。

 次に、何事にも動じない強い意志だ。恩師のカール・マックは言う。「指揮は専制君主、民主主義じゃない」。彼女は、その指示に憤慨した男性バイオリニストのストラディバリウスをたたき割るそぶりをみせて、「指揮者には楽団員が命」と説得する。

 そして、ブリコの才能を認め、支援してくれる人々の存在だ。孤軍奮闘では到底うまくいかなかったであろう。ブリコの容姿の良さもさることながら、彼女の類まれなる音楽的センスと、誰にも負けない情熱が、性別を超えて応援したくなるのである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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