岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

臨場感溢れるリアルな実録映画の秀作

2019年12月07日

ホテル・ムンバイ

© 2018 HOTEL MUMBAI PTY LTD, SCREEN AUSTRALIA, SOUTH AUSTRALIAN FILM CORPORATION, ADELAIDE FILM FESTIVAL AND SCREENWEST INC

【出演】デヴ・パテル、アーミー・ハマー、ナザニン・ボニアディ、ティルダ・コブハム・ハーヴェイ、アヌパム・カー、ジェイソン・アイザックス
【監督・脚本・編集】アンソニー・マラス

長編初監督とは思えない腰の据わった演出、今後の活躍が楽しみ

 2008年、インドのムンバイで起きた同時多発テロを、タージマハル・パレス・ホテルにスポットを当てて描いた実録映画である。タージマハル・パレス・ホテルはインドを代表する五つ星の高級ホテルで、500人以上の宿泊客と従業員を人質にテロリストによって占拠されたそうだ。臨場感溢れるリアリズムで描かれた事件の顛末は、張り詰めた緊張感で息苦しくなるほどだ。

 群像劇としても見応え十分な作品で、職場放棄することなく客の生命を守るため最善を尽くすホテルマンたちや、自らを危険に晒しながらも決して赤ちゃんを見捨てなかったベビーシッターの責任感には心動かされる。一方、貧しさからテロの首謀者に都合よく利用される実行犯の若者たちの哀れに心が痛む。テロリストを単純に悪として描かず、むしろ実行犯の彼らも格差社会の犠牲者として描いているところに作り手の理性を感じる。

 監督はオーストラリア出身のアンソニー・マラスで、これまで数多くの短編映画を手掛け、この『ホテル・ムンバイ』が長編デビュー作とのこと。長編初監督とは思えない腰の据わった演出で、修羅場を舞台にした人間ドラマをスリリングに描いて感心させられる。マラス監督は脚本と編集も手掛けている。今後の活躍が楽しみな映画作家である。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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