岐阜新聞 映画部

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ジャン・デュジャルダンのコメディセンスを充分にいかしたフランス映画

2019年12月01日

英雄は嘘がお好き

©JD PROD - LES FILMS SUR MESURE - STUDIOCANAL - FRANCE 3 CINEMA - GV PROD

【出演】ジャン・デュジャルダン、メラニー・ロラン
【監督・脚本】ローラン・ティラール

恋のさや当てやイカサマ詐欺師ぶりが楽しめる上品でちょっとエッチな艶笑喜劇

 本作は、フランス革命により貴族の特権が廃止され、ナポレオンによって徴兵制が制定された19世紀初頭のブルゴーニュ地方を舞台に、土地の名家ボーグラン家のエリザベット(メラニー・ロラン)・ポリーヌ(ノエミ・メルラン)姉妹と、いい加減なお調子者ヌヴィル大尉(ジャン・デュジャルダン)との恋のさや当てや、彼のイカサマ詐欺師ぶりが楽しめる上品でちょっとエッチな艶笑喜劇である。

 まずは喜劇のお膳立て。ポリーヌの婚約者となったヌヴィルはオーストリア戦線に徴兵されるが、彼が毎日書くと言った手紙は予想通り一通もこない。案じた姉のエリザベットが手紙をでっち上げるのだが、ヌヴィルが活躍するのがインドというのが絶妙だ。当時インドはイギリスが植民地支配を固めつつあったが、フランス人にとっては遥か彼方の異郷の地。誰も知らない世界となれば、いくらでも想像して英雄譚を創作できるのである。

 次はいよいよ試合開始。死んだ事になっていたヌヴィルが、脱走して3年ぶりに命からがら帰って来る。最初はエリザベットに追い返されようとするが、事情を知ったヌヴィルは、彼女のフィクションストーリーを、実際にあった事にして我が意を得たりと語りだす。本人当初はいつばれるかとヒヤヒヤしていたが、語りの回数が増えるに従って「冒険語り芸」ともいうべき講釈師のような話術となってくる。お調子者の面目躍如である。

 物語はどんどん転がり始め、ダイヤモンド鉱山を持っているという偽の投資話をネタに、街の資産家からお金をどんどん集めてくる。完全に詐欺師である。

 コスチューム・プレイによるコメディは、デュマの「三銃士」の要素もあり、昔だったらアラン・ドロンかジャン=ポール・ベルモンドの役回りであろう。『アーティスト』でアカデミー主演男優賞を受賞したジャン・デュジャルダンが、持ち前のコメディセンスを充分にいかした味わい深いフランス映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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