岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

どんな状況にも屈しない少年に寄り添う傑作

2019年11月23日

存在のない子供たち

©2018MoozFilms

【出演】ゼイン・アル=ラフィーア、ヨルダノス・シフェラウ、ボルワティフ・トレジャー・バンコレ
【監督・脚本・出演】ナディーン・ラバキー

少年に寄り添い続けるキャメラには、温かい眼差しが感じ取れる

 『判決、ふたつの希望』の中東レバノンから、また素晴らしい映画がやってきた。女性監督ナディーン・ラバキーの『存在のない子供たち』である。

 『存在のない子供たち』とは、貧困や不法移民で出生届の出されていない子供たちの事。主人公の少年も出生届が出されていないので、推定年齢12歳くらいとしか分からない。たくさんの弟妹の面倒を見ながら、学校にも行かず働いている。

 可愛がっている11歳の妹が、両親に金のため無理やり結婚させられたことに反発し、少年は家出をする。そして、厳しい社会の現実にひとりで対峙していく。

 この作品は、可哀想な少年をセンチメンタルに描いた泣かせる映画などでは決してない。笑わず大人に媚びず同情を引こうともしない少年が、絶望的な困窮の毎日と闘い続ける姿を、セミドキュメンタリー・タッチで描いたドライな傑作だ。しかし、少年に寄り添い続けるキャメラは、安易に彼の内面に踏み込むことはしないが、そこには温かい眼差しが感じ取れる。是枝裕和監督の『誰も知らない』を思い起こさせもするが、レバノンの現状はもっと悲惨なようだ。

 ナディーン・ラバキー監督はこの作品を通して、このような子供たちの存在を社会に訴えかけるとともに、どんな状況にも屈しない少年を魅力的に描くことで、苦難にぶつかりめげている人すべてに勇気を与えてもくれる。

 この作品は、2018年の第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞とエキュメニカル審査員賞を受賞している。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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