岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

難局を乗り切り、いかにして一大プロジェクトを成功させたかを描いたサラリーマン時代劇

2019年11月17日

引っ越し大名!

©2019「引っ越し大名!」製作委員会

【出演】星野源、高橋一生、高畑充希、小澤征悦、濱田岳、西村まさ彦、松重豊、及川光博 ほか
【監督】犬童一心

会社側にあまりにも都合よくできているが、現実を表していることは間違いない

 徳川家康の直系であるにも関わらず、生涯に7回もの国替えを命じられた越前松平家の藩主・松平直矩。中でも天和2年(1682年)の姫路から豊後日田への国替えは、15万石から7万石に減封された上での引っ越しで、藩最大のピンチであった。

 本作は、この絶体絶命の難局をどう乗り切り、如何にして一大プロジェクトを成功させたかを描いた、サラリーマン時代劇である。

 観ているとすぐに分かるが、これは親会社からの理不尽で一方的な受注単価引き下げ等による下請け会社の経営危機に際し、会社存続のためにどうやって事業再構築(リストラクチャリング)をしていくのかの教科書である。

 引っ越しの責任者を命じられた藩の書庫番で書物オタクの片桐春之介(星野源)が、まずとりかかったのは、藩の財政の把握だ。調べてみると3千両(2億2500万)しかない。次に予算だが、引っ越し費用を算定すると2万両(15億円)かかる!不足分1万7千両(12億7500万)をどう調達するかが最初の関門である。

 春之介はどうしたか?彼は、今まで藩が借金を踏み倒してきた回船問屋に「播磨の酒を日田で商えるようにする」という見返りを示す。最終的には当主が「この人だったら必ず返してくれる」と彼の人柄を信用し、8千両(6億)を用立てる。ハーバード流交渉術である。

 さらに、個人の所有物の現金化と放棄により引っ越し荷物をスリム化した上、運搬費用の多くを占める人馬のうち、藩士自らが運搬する事によって、人足費用を減らしコストカットする。

 最後は、藩士2000人のうち600人の大リストラを実施する。なるべく妻子の無い者を指名し、石高が回復したら藩に戻す事を約束して、いったん帰農してもらう。

 会社側にあまりにも都合よくできている話で、実際にリストラされた人からみたら綺麗ごとにすぎるかもしれない。しかし、現実を表していることは間違いないコメディ映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (6)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る