岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

煙害に苦しむ住民の粘り強さと、大煙突完成までの闘いを描いた物語

2019年11月02日

ある町の高い煙突

© 2019 Kムーブ

【出演】井手麻渡、渡辺大、小島梨里杏、吉川晃司、仲代達矢、大和田伸也、小林綾子、渡辺裕之、六平直政、伊嵜充則、石井正則、蛍雪次朗、斎藤洋介、遠山景織子、篠原篤、城之内正明、大和田健介、たくみ稜
【監督・脚本】松村克弥

偉人伝は聖人君子に描けば描くほど、崇め奉るだけになってしまう

 日本書紀や古事記がそうであるように、史実といいつつ、実はある一方の側の都合のいい事のみを「事実」とした歴史ものは多い。人間が書いたり描いたりしている以上、その価値観によって事実の評価が異なるのは当然である。

 本作は、茨城県の日立鉱山の煙害に苦しむ入四間村の住民たちが立ち上がって鉱山側と粘り強い交渉をしていく過程と、「すべてが解決できる」大煙突の完成までの、1910年から5年間の闘いを描いた物語である。

 偉人伝は、その人物を立派で非の打ちどころがない聖人君子に描けば描くほど、共感でなく崇め奉るだけの代物になってしまう。私などのような凡人には恐れ多いだけであり、時に薄ら寒さを感じる。まず、この映画の欠点は、主人公の村の代表・関根三郎(井手麻渡)や企業側の窓口・加屋淳平(渡辺大)たちが、偉業を成し遂げた偉い人物としてしか描かれてない点である。特に社主・木原(吉川晃司)は、物分かりの良い立志伝中の人物と強調されており、人間味をいささかも感じさせない。

 次の疑問は、煙害反対運動は被害のある各地で起こっていたはずだが、「共存共栄」主義を掲げる入四間村の闘いのみが取り上げられており、なぜ他地区と共闘できてないのかが分からない。入四間村ではうまくいったのかもしれないが、「共存共栄」という理想主義を押し付けられても、うまくいく時ばかりではない。むしろ、資本家側に都合よく使われることの方が多いのではないか。

 さらに、この映画の目的の「大煙突による煙害被害の解消」は、確かに入四間村など鉱山近隣の地域は減少しただろうが、拡散する事によって今まで被害のなかった他の地域に被害が及ぶような事はなかったのか?

 映画全体も、主役級の大袈裟な演技や、力んだセリフの言い回しは芝居がかっており、いきめばいきむほど下手な新劇を見ているようで息苦しい。

 「共存共栄」を強調した、私には合わない映画であった。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (1)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る