岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品命みじかし、恋せよ乙女 B! 親日家監督が日本にインスパイアされた作品 2019年11月04日 命みじかし、恋せよ乙女 ©2019 OLGA FILM GMBH, ROLIZE GMBH & CO. KG 【出演】ゴロ・オイラー、入月絢、樹木希林 【監督】ドーリス・デリエ 現代ドイツにおける社会的設定には興味が湧く ドイツ人で親日家の女性監督ドーリス・デリエが、黒澤明や小津安二郎、溝口健二などの作品にリスペクトしている事は分かるが、些か勘違いしているのでは?と思われる作品である。この映画を観ていると、西洋人が東洋に対して一方的に作り上げた概念・いわゆるオリエンタリズムを想起させ、いつの時代の日本人を描いているのかと疑問が湧く。少なくとも、カール(ゴロ・オイラー)が思い描くような日本は今はないし、癒しや救いを求められても困るのだ。 冒頭、カールが酔っぱらって娘に会いに行き拒絶されるシーンがあるが、何故彼がアルコール依存症になったのかは想像するしかない。のちに彼が凍傷により男性器を失ってしまったり、日本を訪れた際のキモノによる女装のシーンを見ると、彼がゲイだとの印象を与え、それが原因だと想像してしまう。ドイツ的男らしさに対する、日本の武士道における衆道(男色)や、歌舞伎の女形などのイメージは一方的に過ぎない。この映画を観ていると、何故か違和感が湧いてくるのだ。 しかし、カールの兄が極右政党に入っているという、現代ドイツにおける社会的設定には興味が湧く。息子の引きこもりもそれが原因というのは少し強引過ぎるが、監督がナチスの亡霊が跋扈している事を危惧しているのはよく分かる。ただ、カールが日本へ行って自分探しをするというテーマには、ほとんど関係が無く、浮いてしまっているのは残念だ。 日本からやって来た父の知り合いだというユウ(入月絢)が、実は…というのは、「雨月物語」や「牡丹灯篭」からインスパイアされたのだと想像するが、その中に潜む日本人の怨念や情念には踏み込めず、話を表面的に捉えているとしか思えない。 あまり乗れなかった作品ではあるが、茅ケ崎館の樹木希林さんの女将は素晴らしい。ブランコに揺られて歌う「命みじかし、恋せよ乙女…明日の月日はないものを」。サヨウナラ希林さん。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2018年12月26日 / 高崎電気館(群馬県) 閉館された映画館にふたたび灯がともる時 2017年12月06日 / 岐阜ロイヤル劇場(岐阜県) 昭和の薫りを色濃く残す商店街で古き良き時代の名画に触れる 2020年01月22日 / キネカ大森(東京都) ミニシアターから名画座まで…いくつもの顔を持つ街の映画館 more
現代ドイツにおける社会的設定には興味が湧く
ドイツ人で親日家の女性監督ドーリス・デリエが、黒澤明や小津安二郎、溝口健二などの作品にリスペクトしている事は分かるが、些か勘違いしているのでは?と思われる作品である。この映画を観ていると、西洋人が東洋に対して一方的に作り上げた概念・いわゆるオリエンタリズムを想起させ、いつの時代の日本人を描いているのかと疑問が湧く。少なくとも、カール(ゴロ・オイラー)が思い描くような日本は今はないし、癒しや救いを求められても困るのだ。
冒頭、カールが酔っぱらって娘に会いに行き拒絶されるシーンがあるが、何故彼がアルコール依存症になったのかは想像するしかない。のちに彼が凍傷により男性器を失ってしまったり、日本を訪れた際のキモノによる女装のシーンを見ると、彼がゲイだとの印象を与え、それが原因だと想像してしまう。ドイツ的男らしさに対する、日本の武士道における衆道(男色)や、歌舞伎の女形などのイメージは一方的に過ぎない。この映画を観ていると、何故か違和感が湧いてくるのだ。
しかし、カールの兄が極右政党に入っているという、現代ドイツにおける社会的設定には興味が湧く。息子の引きこもりもそれが原因というのは少し強引過ぎるが、監督がナチスの亡霊が跋扈している事を危惧しているのはよく分かる。ただ、カールが日本へ行って自分探しをするというテーマには、ほとんど関係が無く、浮いてしまっているのは残念だ。
日本からやって来た父の知り合いだというユウ(入月絢)が、実は…というのは、「雨月物語」や「牡丹灯篭」からインスパイアされたのだと想像するが、その中に潜む日本人の怨念や情念には踏み込めず、話を表面的に捉えているとしか思えない。
あまり乗れなかった作品ではあるが、茅ケ崎館の樹木希林さんの女将は素晴らしい。ブランコに揺られて歌う「命みじかし、恋せよ乙女…明日の月日はないものを」。サヨウナラ希林さん。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。