岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品永遠に僕のもの B! 悪魔的美少年の犯罪を、日常の延長線上にあるように映している 2019年10月22日 永遠に僕のもの ©2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A / UNDERGROUND PRODUCCIONES / EL DESEO 【出演】ロレンソ・フェロ、チノ・ダリン、ダニエル・ファネゴ、セシリア・ロス 【監督】ルイス・オルテガ この映画には救いがないのか? 生まれ持った容姿は個性であり、化粧や仕草で雰囲気を変える事はできても、骨格を変える事はできない。ルックスがいいというのは本人の努力でなく、与えられた天分である。 17歳の連続殺人鬼・カルリートス(ロレンソ・フェロ)が美少年であったのは、たまたまに過ぎない。しかし、彼の容姿が憎々し気な極悪人の顔をしておらず、目鼻立ちの整った愛くるしい顔をしていたという事で、「何故こんな美少年が残虐な犯罪を行ったのか」と、私たちの好奇心と探求心ををくすぐる事になる。 ルイス・オルテガ監督は、この悪魔的美少年による犯罪を劇的には描いておらず、日常の延長線上にあるように映している。カルリートスは、朝起きて、食事をして、殺人をして、踊りを踊って、会話をして、寝る。犯罪を犯す事は彼にとって特別な事ではないのである。だからこそ、不気味な不可解さが際立ってくるのである。 映画を評価する際の材料として、割と多くの人が「感情移入できた・できなかった」で判断していると思うが、このカルリートスには恐らく殆どの人が感情移入できないであろう。彼の犯罪には、貧困や成育歴、病気などの汲むべき事情など一切ないし、殺される方の人には何の落ち度もない。カルリートスは、自分の何がいけないのか分かっていないと思う。 しかし私は、この映画に何故か惹かれる。彼をサイコパスと断定するのは簡単だ。犯罪を犯したのだから罪に問われるのは当然だが、もしかしたら私に見えてない、何かがあるのかもしれない。早い段階で彼の犯罪性をキャッチし、矯正できたかもしれない。この映画を観ていると、様々な思いが私の頭の中を駆け巡る。 では、この映画には救いがないのか?オルテガ監督は、カルリートスが全てを失った事に涙したり、逮捕される事に感づいても母に居場所を告げるシーンを入れている。17歳の殺人鬼も、やはり人の子であったと信じているのだ。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2023年12月11日 / パトリシア・ハイスミスに恋して 人気作家の真実に迫るドキュメンタリー 2023年12月11日 / パトリシア・ハイスミスに恋して 弱さや強がりが垣間見られる異色のドキュメンタリー 2023年12月11日 / インファナル・アフェアII 無間序曲 4K 若き日のヤンとラウの青春物語、無間道への序曲だ more 2019年04月10日 / シネマ5(大分県) 映画館の滞留時間を長く…映画の余韻を楽しむ 2018年05月23日 / 本渡第一映劇(熊本県) この町で映画を観たいという島の人々の声で復活した映画館 2020年11月25日 / 出町座(京都府) 商店街にある映画と本とカフェを愉しむ映画館 more
この映画には救いがないのか?
生まれ持った容姿は個性であり、化粧や仕草で雰囲気を変える事はできても、骨格を変える事はできない。ルックスがいいというのは本人の努力でなく、与えられた天分である。
17歳の連続殺人鬼・カルリートス(ロレンソ・フェロ)が美少年であったのは、たまたまに過ぎない。しかし、彼の容姿が憎々し気な極悪人の顔をしておらず、目鼻立ちの整った愛くるしい顔をしていたという事で、「何故こんな美少年が残虐な犯罪を行ったのか」と、私たちの好奇心と探求心ををくすぐる事になる。
ルイス・オルテガ監督は、この悪魔的美少年による犯罪を劇的には描いておらず、日常の延長線上にあるように映している。カルリートスは、朝起きて、食事をして、殺人をして、踊りを踊って、会話をして、寝る。犯罪を犯す事は彼にとって特別な事ではないのである。だからこそ、不気味な不可解さが際立ってくるのである。
映画を評価する際の材料として、割と多くの人が「感情移入できた・できなかった」で判断していると思うが、このカルリートスには恐らく殆どの人が感情移入できないであろう。彼の犯罪には、貧困や成育歴、病気などの汲むべき事情など一切ないし、殺される方の人には何の落ち度もない。カルリートスは、自分の何がいけないのか分かっていないと思う。
しかし私は、この映画に何故か惹かれる。彼をサイコパスと断定するのは簡単だ。犯罪を犯したのだから罪に問われるのは当然だが、もしかしたら私に見えてない、何かがあるのかもしれない。早い段階で彼の犯罪性をキャッチし、矯正できたかもしれない。この映画を観ていると、様々な思いが私の頭の中を駆け巡る。
では、この映画には救いがないのか?オルテガ監督は、カルリートスが全てを失った事に涙したり、逮捕される事に感づいても母に居場所を告げるシーンを入れている。17歳の殺人鬼も、やはり人の子であったと信じているのだ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。