岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

公害に立ち向かった若者たちの感動実話

2019年10月18日

ある町の高い煙突

© 2019 Kムーブ

【出演】井手麻渡、渡辺大、小島梨里杏、吉川晃司、仲代達矢、大和田伸也、小林綾子、渡辺裕之、六平直政、伊嵜充則、石井正則、蛍雪次朗、斎藤洋介、遠山景織子、篠原篤、城之内正明、大和田健介、たくみ稜
【監督・脚本】松村克弥

男たちの闘いの陰に忘れてはならない恋がある

 1910年、茨城県久慈郡入四間が舞台。その地に日立鉱山が開業して5年が経つ。帰国するノルウェー人の鉱山技師から告げられた、不吉な予告が関根三郎(井出麻渡)の脳裏に暗い影を落とす。鉱山から排出される黄色い煙は亜硫酸ガスで、鉱山の操業が拡大すれば、その煙害により、美しい山々の木々の緑は失われるだろうというものだった。村の地主でもある三郎の祖父・兵馬(仲代達矢)は、煙害の被害が山林だけでなく、農作物にも及ぶという事態を重く見て、鉱山会社に直談判に向かう。会社からの回答は「補償はするが煙害は我慢してくれ」というものだった。村に鉱山を誘致したのは、純粋にその発展を願ってのものだったが、今やその判断が、村を率いた責任が、兵馬を苦しめる。ついには心労に倒れ、あっけなく亡くなってしまう。三郎は兵馬の遺志を受継ぎ、帝大への進学を諦め、村のために尽力することになる。

 公害というのは、産業の発展のために犠牲を強いるものであった。足尾の銅山、水俣の水銀、四日市の排気ガス…これらの社会問題化したもの他にも、地域地域によって、時を超え、形を変えて、蔓延することになった。それは経済発展と比例するもので、身近な海や川の酷いありさまは、人々に危機感を与えることになった。今では、ニュース報道などで見る、中国で起きている事象に驚きはしても、それは他人事になってしまっている。この映画は100年前に日本で実際に起きたことなのである。

 煙害対策のために設立された入四間青年会の会長となった三郎は、写真で被害の記録を撮るという地道な活動を始める。そこで出会うのが日立鉱山の煙害補償を担当する加屋淳平(渡辺大)だった。業績をとるか地元民との友好な関係を大事にするか、悲喜こもごものやりとりが熱い。

 題名にもある高い煙突は、煙害の抜本的な解決策として建設設置されたもので、当時世界最高の高さ155.7メートルを誇った。映画のクライマックスは、住民と会社が一体となり、煙突建設に格闘する姿が感動的に描かれている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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