岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ありのままで“みんないい”んだよ

2019年10月13日

おいしい家族

©2019「おいしい家族」製作委員会

【出演】松本穂香、板尾創路、浜野謙太、笠松将、モトーラ世理奈、三河悠冴、栁俊太郎
【監督・脚本】ふくだももこ

鈴谷家の家族の名前についている色を個性と捉えると、とても素敵なネーミング

 私が人生の指針として肝に銘じているフレーズに、童謡詩人・金子みすゞの詩「みんなちがって、みんないい」というのがある。また、SMAPの「世界に一つだけの花」が好きで、カラオケでよく歌う。

 本作は、監督のふくだももこが通っていた日本映画学校の先生から、「家族みんな、血が繋がってない」という自身の境遇を「大変やな」でなく「めちゃくちゃ面白い」と言われた嬉しさをきっかけに、「誰かに受け入れられる」大切さをシナリオ化して監督した、ありのままで“みんないい”んだよという作品である。

 東京で満ち足りない生活をしている橙花(松本穂香)が、故郷の離島に帰ってみると、島で校長先生をしている父(板尾創路)が母の服を着ていて「これからは母さんになろうと思う」と告げる。それについて誰も説明してくれないし、それどころか当たり前の日常が淡々と続く。誰もが受け入れていて誰も気にしない。この「何が問題なの?」という空気感が、とても新鮮である。

 鈴谷家の家族の名前は、みんな色がついている。橙花に始まって、父は青治、弟は翠。生まれた時は白だけど、みんな人生いろいろあって、違った色に染まっていく。これを個性と捉えると、とても素敵なネーミングだ。

 そもそも映画の冒頭は、口紅でメイクしている唇のアップ。そして、橙花と別居中の旦那との会食でも、テーブルクロスは赤と白に分かれている。娘?の友達の瀧も、髪を栗色に染めてメイクをして、フリルのついた服を着て踊りまくる。これらは人間の意志で簡単に塗り替えられる。色は個性であり、気に入らなきゃ変える事もできる。違和感でなく共感が大切なのだ。

 映画全体に「ありのままのあなたでいい」という肯定感が満ち溢れており、ちょっと気恥ずかしくて中二病的な部分が、何のてらいもなく私に心地よさをもたらしてくれる。否定的な言動が多い世の中で、肯定感がいっぱいの優しき映画で癒されましょう。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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