岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

同じ運命に遭遇したふたりの女性の闘い

2019年10月05日

ニューヨーク 最高の訳あり物件

© 2017 Heimatfilm GmbH + Co KG

【出演】イングリッド・ボルゾ・ベルダル、カッチャ・リーマン、ハルク・ビルギナー
【監督】マルガレーテ・フォン・トロッタ

硬派女性監督が描く、おしゃれでほろ苦い選択の仕方

 モデルとして活躍してきたジェイド(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)は、年齢と将来を見据えてデザイナーへの転身を目指している。その準備に追われ忙しい日々を送っていたが、スポンサーでもある夫のニック(ハルク・ビルギナー)から突然の離婚を告げられる。

 マンハッタンにある高級アパートメントに帰宅すると、そこにはニックの前妻マリア(カッチャ・リーマン)が、何食わぬ顔つきで居座っていた。部屋の所有権の半分は自分の物だと主張するマリアに苛立ちを隠せないジェイドだったが、元を辿ればマリアからニックを略奪する形で、結婚したという負い目がよみがえる。そして今、めぐりめぐって、ニックは若いモデルに奪われようとしているのだった。同じ夫に捨てられた元妻、外見もライフスタイルも正反対のふたりの奇妙な共同生活が始まる。

 監督のマルガレーテ・フォン・トロッタは、1942年にベルリンに生まれた。71年にフォルカー・シュレンドルフ監督と結婚し、81年には『鉛の時代』でヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞するなど、ニュージャーマンシネマを牽引する映画作家となった。85年に『ローザ・ルクセンブルク』、2012年には『ハンナ・アーレント』を発表し、社会派の骨太な作風が持ち味となっていく。その彼女が、ニューヨーク・マンハッタンを舞台に、おしゃれなファッション界に活きる人たちを題材に選ぶのは、ちょっと意外に思えた。

 ジェイドはブランドの運営が暗礁に乗り上げ、早急に資金が必要となり、アパートの売却を急ぎたい。しかし、マリアはそれには聴く耳を持たず、ドイツに住む娘のアントーニアが孫を連れて転がり込み、居座りの態度は頑なになっていく。

 水と油のように反発するだけだったふたりが、女性としての生き方の選択を互いに理解することで、心の和解を迎える。マルガレーテ・フォン・トロッタ監督は、それをユーモアと毒のスパイスで味つけし、女性たちへのエールに変えている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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